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解説:モンゴル投資の新しい可能性


2017-10-09 17:47:06
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 1990年~2016年の間には、モンゴルに112カ国の1万3000企業が投資し、その総額は150億米ドルにのぼった。その8割は2008年~2012年の投資額に当たり、さらに7割は鉱業分野への投資である。しかし目に見えた成果がないのは、その投資における付加価値がないからだと専門家らが苦言を呈すなか、海外投資家たちが注目する鉱業分野で、投資家にもモンゴル側にもメリットのある、一定の技術、原理原則を備えた環境づくりをする必要があると、政府官僚も自覚しつつある。そして、鉱業に留まらず他分野でも投資の環境を整え、成長できるような政策を取り始めている。
 アジアの中央に位置する自然豊かなモンゴルにとって、天然資源、農耕、牧畜などの面でメリットは多い。ここ数年は不況が続いてはいるが、2017年は比較的リスクの少ない年だと言ってよい。なぜならば、鉱産物の価格下落で大打撃を受けた2014 年~15 年に比べ、今年は農業分野の成長がモンゴル経済に明るい兆しを見せているのである。今年の景気上昇はIMF(国際通貨基金)による指導と石炭輸出額の増加が背景にあると、経済学者らは強調している。とはいえ、今までの鉱業分野に固執していた状況を変え、産業への投資を付加価値のあるものにする、そして第三国との協力を深め、海外の技術を積極的に取り入れる時が来たと、ハルトマー・バトトルガ大統領が説いているように、この石炭価格の上昇と国家収入の増加も、ただ一瞬の兆しに他ならないとモンゴル国民も自覚しているのである。
 
モンゴル農産物を世界へ
 
 統計によると、今年の年明けから7ヶ月間のモンゴルの経済成長率は5.3%。一方、財務省は今年の実質経済成長率を3 . 4 % と推計している。また、牧畜分野で8.0%、農業・牧畜全体で8.1%の成長率を見込んでいる。昨年の国内の家畜の全体数は6154万頭にのぼり、前年よりも9.9%増えた。
 実際に鉱山を開拓する前のモンゴルの主な産業は農業・牧畜だった。よって、同分野を同時進行で主力産業としていくことに無理はない。特にモンゴル産の食肉は海外諸国でも評価が高い。食肉、皮革、羊毛、カシミヤ、ミルクなどを主力の輸出製品として充分に通じるわけだ。計画経済の時代は、国内家畜数が2500万頭でも年間で食肉4万㌧、家畜300万頭を輸出していた。現在も牧畜産業は国外輸出額の1 0 % 近くを占めている。年間平均生産量はウール2万3500㌧、カシミヤ5200㌧、獣毛1300 ㌧、キャメル・ヘアー1200㌧、またミルク3億3500万㍑など、膨大な規模を誇る。さらに昨年においては加工肉の生産量が1万7500㌧と、前年比7000㌧も増えた。
 そしてモンゴルにはアジアの中央に位置しているという地理的メリットもある。モンゴルを通して輸出をし
たり、工場を置いたりと、間接的な事業の可能性がいくらでもある。
 今日、モンゴル産のカシミヤは世界需要の3割を占める。これを製品として世界市場に出す大きな空間があ
る。生産者はこれに対して野心を持っている。モンゴル国内にカシミヤの生産業者は60社ほどあるが、その中でゴビ、エールメル、ゴヨー、ハンボグド、アルタイ・カシミヤ、ソル・カシミヤといった6社が製品をつくっている。中でもゴビ社は原料から製品まで全段階をモンゴル国内でまかなっているのが特徴だ。さらにカシミヤ業界は国立科学技術大の教授らの提案で、輸出準備計画を2014年から実施してきた。これにより家庭用ウール、カシミヤ製品を新開発し、国際的に有名な展覧会などに出品している。昨年は製品開発チームとマーケティング研究チームを結成して、関連省庁や団体、他業者などと協力してモンゴル産ウール、カシミヤ製品を世界に紹介する事業を展開しているのだ。
 
鉱業よりもメリットの大きいモンゴルの産業
 
 モンゴルのGDPは今年上半期で7.6兆MNTに達した。今年7 月末まででモンゴルは145 カ国と貿易し、輸出3 5億米ドル、輸入23億米ドルで、対外貿易の総売上高は59億米ドルにのぼった。前年比33.9%の成長率だ。これも石炭輸出額の増加が背景にあると、専門家は分析している。
 海外諸国からモンゴルへの直接投資の規模で見ると、オランダ、中国、ルクセンブルク、英国、シンガポール、カナダ、韓国、米国が大きい。モンゴルの輸出製品の94.8%を鉱産物、ニット製品、宝石、貴金属などで占めており、今年の対外貿易収支が黒字になると期待されていた。黒字の見通しをより濃厚にするため、大統領も政府も動きはじめている。具体的には、投資家および事業者を支援する政策や法的環境の整備に乗り出している。
 モンゴルには天然資源以外にも自然由来のナチュラル製品において有利だ。農業業界からはウール、カシミヤ製品、カーペットなど以外にも羊の尻尾の油を伝統的な手法と現代のテクノロジーを合わせて生産したオーガニック美容ブランド「スーレンフー」など、新しいノウハウ、プロダクトが登場している。また、モンゴル由来の植物ではハルガイ・シャンプー、モン・クリーム、シャル・ドクター(黄色いドクター)、チャッツァルガナ抽出のクリームなどは、すでに世界市場に顔を出している。この自然由来製品により、1 億2600万人の市場を持つ日本と、めでたく初の自由貿易協定を結ぶことができた。両国の経済協定によりモンゴルは97 種目、約5700 種類、日本側からは同じく97種目、約9300種類の商品について一部を関税撤廃、その他を段階ごとに下げることになった。協定の実施に当たって、日本・モンゴル合同委員会を結成し、13の小委員会を設立、活動している。モンゴルから日本への輸出品目はウール、カシミヤ、皮革製品のほか、チャッツァルガナ、うどん、蕎麦の実などをはじめとする40品目を追加する。
 また、食品において世界に誇れる製品といえば、蜂蜜だ。海上約1000mの高さにあるモンゴル産の蜂蜜は世界で一番栄養価が高く、オーガニックだと評される。現にモンゴル産蜂蜜の輸入を希望する国も一、二カ国ではない。アルガ・ガンガット養蜂所は昨年から日本への輸出を始めた。これに関して、モンゴルへの投資がいかにチャンスあるものかを見てみよう。投資家や事業家にとっては、正しく、安定していて、はっきりした環境の下で事業を進められるかが問題だ。モンゴルもこのような環境整備を図っている。2013年施行の「投資に関する法律」により国内外の投資家に課税、非課税の支援をしてきた。また、経済や社会に対し重要な貢献価値があるとした総額6.3兆MNTの5件の事業に対し、融資契約を結んだ。この計画において今後5年で5.2兆MNTの融資を見込んでいる。
 そして、モンゴルにおけるビジネス環境整備の鍵を握るのが、鉄道である。鉄道の問題については障害もあるが、いくつものバリエーションがある。国会では2010年に鉄道関連の政策を出し、モンゴルではロシアと中国を結ぶ3つの乗換えポイント、全長約5000㌔のも及ぶ鉄道構想が繰り広げられている。
 このように鉱業分野に限らず、農業や牧畜、自然環境、軽工業など、投資のチャンスはいくらでもある。バトトルガ大統領も事業家たちとの会合の席で、投資家にとって先進国に近い政策を出し、その意向に沿った法案をつくることが可能だとアピールしている。政府からも投資家の権利保護指導会を結成し、今年に入って80件ほどの苦情や意見を解決するなど、投資家への待遇改善は確実に進んでいる。
 
本誌記者 B.アリオンザヤ