選炭すれば1㌧当たり40米㌦の 付加価値が付けられる

鉱業
41@montsame.mn
2017-11-20 12:43:33
 人口は少ないが、自然資源で国際的な注目を浴びるモンゴルの戦略的主要鉱山の一つは64億㌧が埋蔵されているタワントルゴイ炭鉱グループである。コークス用炭の埋蔵量(18億㌧)では世界10位に入るこの炭鉱から現在年間5000万㌧までの石炭を採掘し、輸出可能になっている。モンゴルの鉱物資源の半分以上を形成する石炭価格は世界市場において値上がり、モンゴルにも経済を拡張する機会が訪れている。
 しかし、いくつかの理由によって、石炭の値上がりの効率を受けられないのが秘密ではない。その一つは前号に述べた国境検問所の通過能力問題である。なお、今回タワントルゴイ炭鉱グループで採掘を行なっている国有のエルデネス・タワントルゴイ株式会社、民間のエナージー・リソース有限責任会社、地方所有のタワントルゴイ株式会社について取材した。
 この3社にとっては能力やビジョン、インフラがそれぞれ異なるが、共通の大変さは石炭価格の変動である。エナージー・リソース社他の国有と地方所有社は精錬により付加価値を付けた石炭売買が優先課題になっている。現在、精錬工場での精炭は1㌧110米㌦、なお原炭は64.9~70米㌦で売買されている。つまり。1㌧当たりから40米㌦を原炭輸出により失っていることになる。
 
歴史的レベルに達した石炭輸出が行き詰る
 ウムヌゴビ県ダランザダガド県庁所在地から東へ100キロ、ツォグトツェツィー郡から西南へ18キロに位置する五つ丘の場所にタワントルゴイ炭鉱がある。確定埋蔵量は64億㌧であり、うち18億㌧はコークス用炭、残りの46億㌧は電力用炭で占める。炭鉱の上から4番目の炭層のコークス用石炭の採取量は67%であり、カナダとオーストラリアより高質だという。コークス用炭の発熱量は7500~8100kcal/kgであり、電力用炭は4900kcal/kgで、中国の製鉄所が主要購入者となる。一時、世界市場で石炭価格が下落し、モンゴルの石炭輸出による収入が減った。こうした苦難時を克服し、昨年から価格が回復し、今年はここ数年にもなかったレベルに達した。モンゴルの経済拡張にも好い機会となり、石炭輸出による収入も圧倒的に増えた。
 国家統計委員会の発表によると、今年上半期では石炭輸出が1910万㌧にのぼり、12億8230万㌦に達した。これは例年の年間平均とほぼ相当する。輸出石炭の大半は原炭であり、全鉱物資源輸出の50%以上を石炭で占め
る。これは輸出の主要市場となる中国政府の石炭輸入の増加対策にも関係している。石炭輸出の大半をエルデネス・タワントルゴイ社が占めており、残り、エナージー・リソースと地方有のタワントルゴイ社が占める。しかし、8月に中国は国境検問所の監査を厳しくしたため、国境通過量も半減っている。一日1600台のトレーラーが通過していたのが、500~600台に減った。モンゴル政府も迅速な解決に向けて関係機関と交渉を進めて
いる。
 だが、単に国境通過能力のほか、タワントルゴイ炭鉱グループで採掘を行なっている上記の3社の2社にもっとも迫られた問題は精錬所である。



エルデネス・タワントルゴイ社、乾式選炭試験工場設立
 
戦略的炭鉱を経済活用し、開発とインフラ計画実施の基本目標の一環で、国会と政府決議により2010年に国有のエルデネス・タワントルゴイ株式会社を立ち上げた。同社はタワントルゴイにおける主要部分となるツァンヒの西と東口で採掘を行なっている。輸出の大半を負担するエルデネス・タワントルゴイ社が活動開始から7年間経つが選炭工場、電力、水供給、鉄道などのインフラが整備されていないままである。完全にインフラが整備されれば、モンゴルの経済に多大に寄与するほか、地域の石炭市場にも存在感を発揮する機会になれる。
 エルデネス・タワントルゴイ社は現在4炭層の最良質の石炭を採掘し輸出している。もし、採掘が計画通りに進めばまもなく次の炭層に移行する。中国政府は輸入及び輸送石炭の含有内容となる科学物質の最上限を規定している。また、石炭の発熱量の最低限も既定されているので、この条件に合わせるのに、必ず精製が必要になってくる。
 同社は2012年に湿式選炭システムで年間15000万㌧の選炭工場設立に向けてフィジビリティスタディ(FS)を作成したが、バルガス・ウラン湖地の地下水利用は反対されたため、停止となった。なお、次の解決方法を探り、日本の永田エンジニアリング株式会社が乾式選炭システムの提案に基づき2013年に協力覚書を結び、調査事業を開始した。試験調査は良い結果だったので、年間30万㌧の選炭試験工場を2018年第1期に開設すると、今年8月に締約している。砂使用の乾式選炭工場が成功すれば、2年後に稼働能力を伸ばす目標を立てている。乾式選炭システムは湿式より安価で、ゴビ地域で直面する問題になっている水資源にも被害を与えないのが特徴である。




地方所有「タワントルゴイ」1㌧当り17米㌦を納税
 
タワントルゴイで活動する初の鉱山会社とは地方有のタワントルゴイ株式会社である。1966年から活動する同社の51%は地方有、49%の9割をアジナイ・コーポレーション、エールメル社などの国内企業、残りを個人が所有している。
 タワントルゴイは2004年までにゴビ各県の石炭を賄う小規模炭鉱だったが、コークス用石炭を中国へ輸出し始めた2011年から輸出量で最上位に入る(6100万㌧)企業、モンゴル証券取引所では、市場評価で最大企業(5800億トゥグルグ)、また全国レベルでは納税額で第2位(1億2000万米㌦)に入る大企業に成長した。タワントルゴイの埋蔵量は1億9750万㌧、その7000万㌧がコークス石炭であり、サイトから直接販売している。同社のエコノミストのCH.トゥルマンダフ氏によると、1㌧当り17米㌦を納税し、これは、石炭分野で活動している各企業から最も高い金額という。納税後の純益は572億トゥグルグ。今年は国に1280億トゥグルグを納税した。株価は1200トゥグルグだったが2017年9400トゥグルグに上がった。タワントルゴイの電力用炭は近くの11郡とドルノゴビ、ドンドゴビ2県の国境ポストが購入している。
 1㌧当りの採掘経費は3万トゥグルグだが、国内の利用者にむけて1万5000トゥグルグとして販売している。国内市場に向けては、2016年に7000万トゥグルグの割引をしている。年間20億トゥグルグの赤字を国内取引から受けるが、それを外国市場から補う。タワントルゴイ社は選炭工場2019年に開設すると計画中。なお、選炭工場設立には唯一の問題はゴビ地域の水問題だと、同社のR.セドドルジ社長が話す。社長は「ヘルレンゴビとオルホンゴビ計画を直ちに実施する必要がある。もし、計画実施が成功すれば選炭工場を建て、付加価値を付ける。そうしないと、水問題をどう解決するかはまだ不確定である。ヘルレンゴビ計画を中国側が支持してい
るが、地方住民が反対している」と心配事を話してくれた。水流を変え、水を引くことが重要だとエルデネス・タワントルゴイ社の幹部らも指摘していた。
 ヘルレンゴビ計画とはモンゴル最長と最大の河の一つであるヘルレン河からパイプを通してゴビ地域に水を引く目的の計画である。オルホンゴビ計画も同様にオルホン河から740㌔のパイプをタワントルゴイとオユトルゴイに引き、そこからドンドゴビ県のマンダルゴビ県庁所在地とウムヌゴビ県のダランザダガド県庁所在地に水を供給するのが目的である。これらの案件による水の50%を鉱業と他の産業、30%を灌漑農業、残りを飲料水と牧畜業、自然環境用に充てる。これらの計画も長年にかけて長引いている。

エナージー・リソース社、選炭工場の稼働能力の半分を活用
 上記の2社には選炭工場がないため、サイトから原炭を40米ドル安く販売していたが、エナージーリソース社が選炭工場の稼働能力の半分のみを活用している。12年間活動している同社は年間1500万㌧の選炭工場を2013年に開設した。工場には使用水の98%を再使用する先端技術を導入したのは、国内だけでなく、地域的に初となる。これは水不足のゴビ地域に最適な技術である。
 オハー・ホダグコークス用炭鉱の面積は2962㌶、埋蔵量は6億8000万㌧。このうち2億9200万トンを30年間露天掘りとして計画し、残りを坑内掘りとして採掘するという。
 この炭鉱で採掘を行なうエナージーリソース社をMCSグループ、ペトロビス社、ションフライ・グループが共同で立ち上げ、2010年に香港取引所に登録し、国際市場に株式を上場した。
 エナージーリソースがオハーホダグ炭鉱の総合開発には1兆2000億トゥグルグの投資が必要だが、2009年から国家予算に8000万トゥグルグを納税し、国内の3500社と協力した経緯がある。過去7年間4090万㌧の石炭を採掘している。現在、選炭工場設立のほか東部6県に電力WP供給する発電所を2011年に設けた。エナージー・リソース社のTS.バーサンドルジ最高執行責任者は「露天掘り炭鉱の年間能力は1000万㌧だが、現在600万㌧のみを採掘している。選炭工場も完全に稼動できない状況であり、現在年間500万㌧しか選炭していない。年間平均5割のみを活用している。主な理由は国境通過能力と関係している。中国では購入者は入るが国境通過
能力に合わせて採掘し選炭している。現在、弊社にはトレーラー200台の輸送が許可されている。問題発生前にも完全に稼働能力を活用できなかった。これを解決する唯一の方法は鉄道だ」と述べた。
 石炭価格下落の2014~2015年にエナージー・リソース社は石炭は50米㌦までに落ち込み、ピークを迎えていた2011~2012年には156米㌦にも上っていた。なお、現在1㌧当り110米㌦であるが、採掘量と生産量を増やせば収益も伸びる時期である。
本社記者:N.ガントヤ