ボンバルダイ作者・文化大使のエルデネバヤル氏:ボンバルダイはモンゴル子どもの勇気と優しさの象徴

特集
naranchimeg199@gmail.com
2018-05-09 11:33:49
 昨今、モンゴルから日本へ様々な商品が輸出されるようになったが、その中で今注目されるものの一つが、モンゴルの漫画とアニメだ。2015年に日本外務省主催の日本国際漫画大賞で最優秀賞を受賞した絵本「ボンバルダイ」。モンゴル遊牧民の生活と母子の絆を描いたこの作品が、漫画大国日本で最優秀賞に選ばれるほど、日本人の心に触れたものとは一体何だったのか。作者のナムバラル・エルデネバヤルさんに聞いた。エルデネバヤルさんは先月のツォグトバータル外相の訪日時に、随行員でモンゴルの文化大使として同行した。
 
――今回、文化大使として、またツォグトバータル外相の随行員として訪日されたとのことですが、どんな印象でしたか?
 日本には10回以上行ったが、今回は外務大臣の随行員として政府間の行事に参加し、そこでクリエイティブ産業について紹介するのが主な任務だった。外務大臣もよく意識してくれていて、ビジネスフォーラムではわが社のスタッフがボンバルダイ・プロジェクトについて紹介し、それも手ごたえがあった。
 
――河野外務大臣と白鵬関にプレゼントしたというボンバルダイ・カーペットはモンゴル国内や海外で販売する予定はありますか?
 このカーペットはもともとモンゴルの産業支援の目的で、エルデネト・カーペット社と協力して作った子ども用カーペットです。そもそもモンゴル市場には子ども用のカーペットが少ない。モンゴル国内では少量生産ですでに流通していて、4月から本格的に市場で販売する予定。海外での販売はまだだが、実はほかにもノートやぬり絵カレンダー、健康食品などのボンバルダイ・グッズも制作している。

――「ボンバルダイ」のアニメ化は現在どれくらい進んでいますか?また、シリーズ本の完成までにどれくらいの期間を予定していますか?
 アニメ化は順調で、今年5月には完成予定で、まずはモンゴル語、日本語、英語版で制作している。絵本は108冊のシリーズになる予定で、それは10年後には完結させるつもりだ。
 
――ボンバルダイを通じて読者に何を伝えたいですか?
 まずはモンゴル人の生活に染み込んだ遊牧民の文化、モンゴル自体を世界に紹介したい。また、母子の絆などもある。漫画大賞の審査員が寄せてくれた感想の中で、「人類の文化や言語、空間に関わらず、愛というのはいかに貴いものかをこの絵本が再認識させてくれた」という言葉には元気づけられた。
 
――海外のコンクールでも審査員を務めているとか?
 自社関連のBrain Navi ASIAカンパニーの主催でイラスト・コンクールをモンゴル、ベトナム、インドネシア、タイの4カ国で開催して、そのモンゴル代表審査員として行っている。
 
――絵を描く以外に趣味や興味を持っていることはありますか?
 映画を観ることくらいかな。コメディ映画もよく観るが、重要視しているのは時間の無駄にならない質のいい映画だ。ホラー映画は苦手で、良質なものは怖すぎるし低質なものを観ると腹が立ってくる(笑)。
 
――遅くなりましたが、2人目の息子さんの誕生、おめでとうございます。制作に当たって父親としての思いも反映すると思いますが、息子さんにもボンバルダイのような健気な子に育ってほしいと思いますか?
 長男は顔がすでにボンバルダイに似ているよ(笑) ボンバルダイは長男が生まれる一年前に始まったプロジェクトで、似せて描いたわけではないが、一般的にモンゴルの子どもは頬がふっくらしているのが特徴で、モンゴルの子どもはみんなボンバルダイに似ていると言っていいと思う。その健気で勇敢な性格も、モンゴルの子どもはすでに皆持ち合わせている。ボンバルダイはモンゴルの子どもの象徴だ。田舎の子どもはボンバルダイ以上の勇気の持ち主だろう。制作に際してもちろん自分の子どもを思う気持ちもあるが、僕はそれ以上にモンゴルの子どもすべてを思って描いている。
 
――ご自身の幼少期の思い出も作品に影響していますか?
 小さな子どもでも親を思えば勇気が出るものだ。それは僕が子どものときもそうで、その思い出は少なからず影響している。実は僕は生まれも育ちもエルデネト市なので、田舎には夏休みに行って馬に乗ったりするくらいだった。どちらかというと憧れの方が強いが、だからこそモンゴルならではの遊牧民の伝統文化を世界に知ってもらいたいという思いがある。
 
――漫画大賞の受賞など、ボンバルダイが日本で高く評価されているのは何故だと思いますか?
 いちばんの理由は、母子の絆ではないかと思う。たった5歳の息子が病気の母親のために極寒の中をアルガル(牛のふん)探しに出掛けていく。母親は帰ってきた息子を抱きしめて、キスする。忘れかけていた、家族が互いを思いやる姿が現代の日本の皆さんの心にも響いたのだろう。
――今後の目標は?
 とにかく、ボンバルダイ・プロジェクトをより国際的に展開させたい。当分の目標はこれだね。
 
――ありがとうございました。今後のますますのご活躍を期待しております!