モンゴル人は優れた“名馬”に乗るのが憧れ       トヨタの新車販売は全社員と力を合わせ、GO!

特集
naranchimeg@montsame.mn
2018-10-03 10:15:17

 日本人観光客が、空港から街中に入るまでに驚く光景を目の当たりにする。それは草原でも、高層ビルでもない。車だ。「コレもアレも、走っている車のほとんどがトヨタ車じゃないですか!」。

 首都を走る全車の7~8割がトヨタ車という。他のアジアと比べても断トツの、モンゴルならではの絶大な信頼を得ている。しかし、ほとんどが中古車で、新車はまだ1割にも満たない。こんな現状打開に、新車市場の開拓に挑む男が赴任してきた。

 今年1月に着任。新会社はオープンまでの準備期間を経て、6月18日に開所式を迎えた。それからまだ3ヶ月しか経っていない、そんなある日、トヨタセールス・モンゴリア(通称TMON)社長の倉橋利郎さんにインタビューした。

 明るいオフイスのワンルームに社長以下17人が働いている。特別な社長室も仕切りもない。出迎えてくれた倉橋社長は、丁寧だが、気さくなお人柄のようで、社員の社長評も「偉ぶらない」とすこぶる良い。全社員が心をひとつに頑張っていこうとするフレッシュな気運を感じさせた。


――これまでの自己紹介をお願いします。

 トヨタ車のビジネスを始めたのは2016年からで、まだ3年余りですが、海外経験はアメリカで自動車組み立て工場向け物流の仕事をし、次いでパナマで5年、モンゴルは3番目の国になります。名古屋出身でトヨタ担当ですから、何かご縁があるのでしょうね。よろしくお願いします。


――では、御社のモンゴルでの仕事内容についてお話しください。

 わが社はトヨタの新車のみを扱っており、日本のトヨタから輸入した車をヘッドモーターズ、タワンボクド、ムンフハダという正規ディーラー3社に販売をお願いしている輸入卸売業者です。3社はいずれもショールームやサービス、整備工場をもち、新車販売から修理までの一貫作業を行っています。当社は、このディーラーさんの様々な相談に乗り、解決していく。そのため、日頃から人間関係を大切に、より良いコミュニケーションを図るよう努めています。



社員全員が会社の「顔」。前列左から3人目 粟井トヨタ事務所長、倉橋社長、 山田サービス・部品部長。後列左、森山駐在員



――ディーラーさんにはどんな働きかけをされているのですか。

 私どもにとってはディーラーさんがお客様です。その先には車を買っていただくお客様がいます。ディーラーさんには「お困りごとはないですか」と問いかけ、販売やサービスに関するご相談をはじめ、広告宣伝や販売促進イベント企画、お客様のケアを如何に向上させられるか、消費者を惹き付けるブランドのイメージをどう押し出すかなど、互いに話し合っています。


――御社の主力商品はなんですか?

 ランドクルーザー200で、売れ筋700~800万円。モンゴルの地形や厳しい気候にも耐えうる、世界中で最もどんな環境にも適応できる車です。モットーは、「どこへ行っても、必ず帰って来られる車」というトヨタの中でも歴史ある車です。


――そんなに古い歴史があるのですか?  

 戦後のGHQがジープを走らせていた頃から開発し、60年以上の間、進化して来た車で、どんな悪路でも壊れない頑丈さと絶対的な信用をウリにして来ました。


――車の売上げ状況や、その背景についてどう見ていますか?

モンゴルに輸入される車は、1年で約4万5000台です(2017年)。その新車は約2000台弱で、そのうち、トヨタが70%弱を占め、お蔭様で多くのモンゴルのお客様にご愛顧いただいております。中古車も約2万5000台がハイブリッド車のトヨタプリウスで、たくさんのプリウスが街中を走っていることに赴任当初は非常に驚いていました。資源国モンゴルでは、経済上昇と共に需要は非常に伸びています。一時期の経済低迷時期を乗り越え、最近は右肩上がりで、昨年の販売台数は1500台弱でしたが、今年は8月ですでに1700台弱となっています。モンゴル人は車好きが多く、遊牧民の血が流れているのか週末は田舎へ移動するのに車を使う。販売3社が競合しながら好調を維持しています。


――なかなか強気ですが、その根拠は?

 新空港が出来たり、ムンフハダも南へ移転し、その向かい側に新市庁舎も移転したりする。そんな流れの中で新興住宅が増えていく。将来は南に新しい街が広がると、我々にとって魅力あるエリアになります。また、人口も増えていく。経済成長と共に、従来の富裕層に加えて購買層が増えていることも大きな要因です。ただし、好調一辺倒ではいかないので、販売動向はきめ細かく注視しています。


――中古車との競合は気になりませんか?

 新車と中古車は棲み分けしています。むしろ、中古車の方は新車購買の予備軍ですから、修理に来られた時などは、セールスのチャンスだと思っています。


――いま、販売面で一番注目していることは、何ですか?

 最近、銀行ローンが積極的になっていることですね。ランクルは中古になってもあまり値崩れしない人気車だから、「ランクルなら担保に」と銀行も融資に積極的なようです。今年になってその現象が顕著です。富裕層でなくとも安定した職に就き、ある程度の所得がある方でも買える状況になっています。中古車向けのローンも、出始めていると聞きますね。


――ランクルと並び、最高級車のレクサス新車も街中で見かけるようですが?

 事業で成功された人や、朝青龍など力士さんたちが買ってくださっている。エンジンの大きさと高級感がウリのレクサスは、1台で1500万円はします。モンゴル人は昔から名馬に憧れていて、“現代の名馬”と言えばランクルとレクサスです。これに乗って、広い大地を、砂漠や森の中を縦横無尽に駆けまわりたい。そう考えている人が多いのでしょう。ある時、ランクル・ファンクラブの席で、「ありがとう!」と感謝され、居合わせたトヨタのチーフエンジニアの方が、「人口の少ない国で、こんなにも愛されているなんて」と大変感動していました。我われは一層お客様の要望に応える努力をしていかねばなりません。


――例えば、どんなことをされているのですか?

 毎年のナーダムの時に、モンゴル相撲の優勝者にランドクルーザー1台を贈っています。これはテレビで放映され、宣伝効果は絶大です。しかし、今後は将来の消費者となる若者たちが相撲を見るかどうかなど、検討していく必要がありそうです。子どもたちには、交通安全教科書を1800冊作り、ある学校の生徒たちに配布しました。来年以降、さらに多くの学校に広めていきます。また、小・中学生に呼びかけ、「トヨタ・ドリーム・アートコンテスト」を行い、未来に夢を持つ楽しい発想の絵に日本へ行ける賞を授けたりしています。今後は、個性の多様化に応じた取組みが必要と考えています。


――なるほど。では、会社の将来ビジョンやミッションについてもお聞きしたいです。

 将来のお客様となる若者たちへのアプローチが大切です。彼らの好みを調査し、「カッコいい。乗りたい」と思わせるブランドイメージの構築が重要です。「安全で安心」「どこでも走る強い車」を提供し、モンゴルの人により良い生活をしていただくのをビジョンとし、ミッションは多くのトヨタファンを増やし、お客様が期待する以上のサービスで感動させる。車を売るだけでなく、売ってからのきめ細かいアフターサービスを行う。そのためには、自分がモンゴルの社会や文化を知る必要があるので、歴史博物館へ行って理解を深めたり、モンゴル語を習って人と交わったりして努力しています。


 ――宣伝方法は何が主体でしょうか。

 これまでのテレビやラジオのCMから、スマホの普及率が高いので、facebookなどSNS時代に対応する宣伝の仕方に変えていかなねばなりません。今後の研究課題です。


 ――御社の社会貢献では、何がありますか?

 子どもの交通安全対策や絵画コンクールなどありますが、ハイブリッド車のプリウスに搭載されているバッテリーの処理などもあげられます。バッテリー交換でそのまま廃棄されると土壌汚染など環境へ影響する。日本ではニッケルに戻して再利用の仕組みが確立していますが、モンゴルではゴミ捨て場に捨てれているものもあります。一部は日本に返却していますが、これらを回収してモンゴルでリサイクルできないか、今後は環境問題にも取り組んで行きたいと思っています。


 ――最後に、トランプ大統領が関税引き上げを実行したら、どんな影響がありますか?

 トヨタは全世界で1年間に1000万台弱の車を販売しています。ですから、関税の引き上げは大問題です。モンゴルに限って言うと、中国経済に大きく依存していますので、間接的な影響があると思われます。私どもは2020年の国政選挙を注視していま す。政権交代などがあれば、社会が不安定になるので、選挙イヤー前は警戒が必要です。モンゴルの政治、経済はまだまだ安定しているとは言えませんので、慎重に経済情勢を注視していきたいと思います。


――どうもありがとうございました。今後のご活躍を期待します。





「取材を終えて」   

 心に決めたような情熱を感じさせる倉橋社長。趣味は週末にやるゴルフトテニス。モンゴル人仲間とも交流してモンゴルライフを楽しむ。単身赴任の47歳。家族は高校、中学の娘と息子二人。