ハイライト

ウンドル・ゲゲーン・ザナバザル


2017-05-08 09:48:22
画像  
 
 チンギス・ハーンの「黄金の氏族」の血を引くウンドル・ゲゲーン(「徳の高い活仏」の意)・ザナバザルの才能や技術・資質を専門家は「東洋のルネサンス」と評し、ミケランジェロ・ブオナローティやレオナルド・ダ・ヴィンチらに例えられる。ウンドル・ゲゲーン・ザナバザルは、政治家・学者であるばかりか、建築家であり、彫刻家、詩人、仏師、画家、哲学者でもある。多様な才能、人道的な思想、高い芸術性により、正にルネサンスの芸術家らに匹敵する真の芸術家であった。ザナバザルの五智如来、オチルダリ仏、弥勒菩薩、文殊菩薩、白多羅菩薩、緑多羅菩薩、二十一多羅佛母、仏舎利塔などの作品群は今日においても高い評価を受けている。
 才能を十二分に発揮して制作した緑多羅菩薩像は、ザナバザルが一体だけ制作した仏像である。この仏像についてはある物語が伝えられている。ザナバザルは、緑多羅を作る際、21歳の若さでこの世を去った恋人の姿に似せて作ったという物語である。緑多羅はきれいなアーモンド形の眼、鼻筋の通った鼻、赤ちゃんのようにぷっくりした頬、デリケートな唇、若さあふれる美しい体つき、柔軟な動き、蓮の花をもった優美な手など、インド・チベットの多羅菩薩とは一線を画している。伝統的な造仏法を守らなかったと言われるが、不屈の精神を光輝く菩薩像に投入し、手足の部分を接合しない一体鋳造の技術を用いた特徴ある作品である。その姿は、時間がたっても色あせない微笑みをたたえるモンゴル女性そのものである。
 平凡な女性の姿をした白多羅菩薩像は、泥の中に根を張りながらも泥にまみれず美しい花を咲かせる蓮の台に座り、右掌をこちら向きに開いて右膝に柔らかく置いている。その尊顔、体形、手指は子供のように柔らかい。完璧な美しい姿を左肩の蕾を開いたばかりの花に例えて表現している。この白多羅像は、風以外にはいかなる人も触れていない清楚ではにかみ屋のモンゴル少女の姿であり、最高レベルの芸術的表現法として今日に受け継がれてきた。
 5歳の時にハルハ・モンゴルのジェブツンダムバ・ホトクト1世として即位したザナバザルは、法衣、読経、建築、チャム祭などをモンゴルの生活や遊牧民の根本思想に調和させ、モンゴル仏教を確立した功労者である。ザナバザルが考案した「ソヨンボ」は現代モンゴル国の象徴として国章となり、国旗のデザインにも採用されている。このように幅広い分野で発揮されたザナバザルの才能は数え上げれば際限がないのである。ザナバザルは「辺境のため文化の影響が届かないハルハ・モンゴルの光となり、あらゆる災難から救済し、庶民に安寧をもたらす祈りによって」誕生したと史料に記されている。
 ザナバザルはモンゴル人の智慧の光となった。画家のニコライ・レーリッヒはザナバザルを「モンゴル人の美的感覚、遊牧民の芸術に対する理解、その世界観やものの見方を自らの作品を通じて世界に知らしめた偉大な遊牧民です」と記している。