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遊牧民の宗教


2017-05-05 16:25:57
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 遊牧民は古くよりあらゆる宗教に対して寛容であった。例えばモンゴル帝国時代、首都カラコルムには仏教寺院12、モスク2、教会1、合計15か所の宗教施設が存在していたという。1254年、チンギス・ハーンの孫モンケ・ハーンの勅令によって各宗教の教理に関する討論会が行われたことが史料に記されている。さらにチンギス・ハーンが制定したとされる法令「大ヤサ」にも信教の自由が定められていた。

モンゴルのシャーマニズム
 
 シャーマニズムはモンゴルにおいて天や自然崇拝と密接に関係しながら発展してきた。シャーマンは、天地・自然・祖霊が人々に加護を与えると考え、生態系のバランスが保たれ、人の運気やエネルギーが高まり、人々が清らかに正しく生きられるよう願うのである。シャーマンの衣装や儀礼は人々を驚嘆させ、畏敬の念をいだかせる。衣装の中には神霊が存在すると考えられており、その縫製や着用の仕方には細かなしきたりがあって、部族ごとに異なっている。シャーマニズム儀礼の一部がモンゴルの仏教に吸収され今日に至っていることは極めて興味深い。
 
モンゴル仏教
 仏教は紀元前2世紀にモンゴルに伝来し、その後16世紀に広まって今日に至った。著名な啓蒙家であった活仏ザナバザルは仏教という概念をモンゴルに普及させた。モンゴル仏教は、法衣、造仏法、寺院建築、医学、天文学、読経などが独特で、他の仏教国のそれとは大きく異なっている。例えば、読経はチベットのそれとは違って、民間に伝わる伝統的な旋律に従い、オルティンドー(民謡)のように聞こえる。モンゴルの高僧たちは宗教哲学に関する専門書を数多く生み出し、それらは他の仏教国でも高い評価を受けている。
 仏教が最も盛んとなった17世紀以降、遊牧民の民間医療が仏教医学と結びついて著しく発展した。そのため、この時代はモンゴル医学史の「黄金時代」と呼ばれている。このように、仏教がモンゴルに普及する際、遊牧民独自の思想、豊かな伝統を吸収して独特な発展を遂げ、「モンゴル仏教」が成立した。今日においてモンゴル人があらゆる宗教に対して畏敬の念を抱くことができるのは、遊牧民が宗教の教えや思想を学問とみていること、またあらゆる学問を重んじることと関係している。また別の観点から、モンゴル人がいかなる宗教や説話についても自らの世界観との共通点を見いだす能力が非常に高いことも付け加えたい。
 

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