安達要吉氏: 冬のモンゴルでしか味わえない感動を届けたい
社会
(ウランバートル市、2025年12月26日、国営モンツァメ通信社)広大な自然と温かい人々に惹かれ、35年前に初めてモンゴルを訪れた日本人観光のプロ、安達要吉氏。夏だけでなく、冬ならではの感動体験や教育支援にまで思いを巡らせる氏の視点から、モンゴルの魅力を伺った。
ーーモンゴルで事業を始められたきっかけを教えてください。
モンゴルとの関わりは、今から35年前にさかのぼります。当時、在モンゴル日本大使館から「モンゴルの観光開発に協力してほしい」という依頼をいただいたことがきっかけでした。
初めてモンゴルを訪れたとき、私はこの国の広大な自然に心を打たれました。そして、遊牧民の人々の優しさや親切さ、温かいホスピタリティに強い感銘を受けたんです。だからこそ、この素晴らしい国と人々のことを、日本のみなさんにもっと知ってほしい、それが事業を始める上での大きな動機になりました。当時のモンゴルには、いまのような観光資源はほとんどありませんでした。世界遺産も少なく、食べ物の選択肢も限られ、民主化のころはジャガイモ、ニンジン、タマネギくらいしか手に入りませんでした。ホテルもバヤンゴルホテルやウランバートルホテルがあるだけで、チンギスハーンホテルは建設中でした。つまり「観光国としての設備」は何もなかったわけです。それでも私は、モンゴルにはそれらをはるかに上回る価値があると感じました。人の温かさや豊かさ、そして広大な大地が秘める力は、どのような観光資源にも勝る魅力だと確信していました。
今、こうしてウランバートルに高層ビルが立ち並び、人々の暮らしが豊かになっていく様子を見ると、「本当に発展したなぁ」としみじみ思いますよ。
ーー12月3日、日馬富士奨学金基金への寄付に関する覚書に署名されましたが、モンゴルの若い世代の教育支援に関心を持たれた背景やその思いについてお聞かせください。
会社を経営する上で、私は「世界に貢献できる企業でありたい」と常々考えてきました。利益が出れば、その利益を社会に還元する取り組みをいくつも実現したい。そう思い、その理念を実行できる会社をつくったのが、今の会社です。また、78歳になり、人生の終盤に差し掛かる今だからこそ、少しでも社会の役に立つことをしたいという思いが強くなりました。
モンゴルの若い方々には、もっと日本を好きになってほしいという願いもあります。日本への留学生が増えていると聞き、「新モンゴル日馬富士学園」の皆さんとも協力し、そうした教育的な取り組みを広げていければと考えています。
さらに、現在政治家として活躍している新モンゴル学園のJ.ガルバドラフ先生は私の古くからの友人です。彼の学校運営や教育への情熱を長年そばで見てきて、私も教育分野で何か力になれたらと思い続けてきました。こうした縁や思いが重なり、日馬富士奨学金基金への支援につながったのです。

ーー日本の会社として、モンゴル旅行で特に強みを発揮できるポイントは何でしょうか。
私たちの強みは、「日本人が求める旅行の感性やサービスを、モンゴルで実現できること」 にあります。
日本に行かれた方なら、だれもが日本のおもてなしに気づくはずです。店の人が親切で、言われる前に必要なことをしてくれる。あの「日本的ホスピタリティ」を、ここモンゴルでも提供したいと考えてきました。そのために、当社のスタッフはずっと私と一緒に働いてきた、20年来の仲間ばかりです。私の考え方もよく理解してくれていて、ほぼ全員が年に1回、あるいは2回、東京の本社で研修を受けます。英語を学び、日本の接客やサービスのあり方を実際に体験し、モンゴルに戻ってから日本のお客様にその感覚をそのまま届ける。それが、当社ならではの大きな特徴だと思います。もう一つ大事にしているのは「時間を守ること」です。モンゴルで、遊牧民文化もあって時間の感覚が「午前か午後か」という大らかさもありますが、私はそんなモンゴルの人たちの温かさを大好きだと感じながら、35年間仕事を続けてきました。
ーーお客様から寄せられるご感想や評価の中で、特に印象に残っているものはありますか。
お客様が一番感動されるのは、やはりモンゴルの「自然の大きさ」です。どこまでも続く広大な景色や手が届きそうなほど美しい星空。そうした大自然に心を揺さぶられて帰国される方が多いですね。
しかし、それ以上に強く印象に残るのが「人の温かさ」です。遊牧民のゲルを訪ねると、初めて会ったばかりなのに「うちの馬乳酒は一番おいしいから飲んでいきなさい」「馬肉の煮込みを作ったから食べていきなさい」と驚くほど自然に、ためらいなく勧めてくれます。
そうした素朴でまっすぐな親切に触れ、「こんなに心の豊かな人たちがいるのか」と深く感動されるお客様が本当に多いんです。
ーーお客様が一番感動する、モンゴルならではの瞬間は何でしょうか。
以前は、星空の美しさや広大な景色に感動されるお客様が多かったですね。しかし最近では、-40度の極寒の中で体験する「初日の出」が大きな感動ポイントになっています。日常ではあまり感動しないモンゴル人でも、日本人のお客様は心から感動されます。かつては寒さのため、冬に訪れるお客様はほとんどいませんでした。夏だけが観光シーズンでしたが、当社では「モンゴルでしか味わえない新しい感動体験を冬にも提供しよう」と考え、冬季ツアーを企画しました。その結果、冬に訪れるお客様は200名に上るほどになり、今では冬も忙しい状況です。
3年前に会社を立ち上げた際はコロナ禍でお客様が来られず苦労しました。しかし、「冬も仕事を作ろう」と若いスタッフたちに呼びかけ、冬季ツアーの企画を実行しました。その際に、98歳のおばあちゃん、その娘さんが70代、孫さんが50代という三世代のお客様が参加してくださり、非常に印象的でした。
東京の本社の社員も旅行会社を回りながら「こういう冬のツアーがあります」と紹介し、パンフレットを配布します。今年も楽しみにして来てくださるお客様がいます。
ーー社長が一番好きなモンゴルの風景や場所を教えてください。
私が特に好きなのは、ホヨルザガル・キャンプ場からの景色です。広大な平原の向こうに山々がそびえ、朝日が昇る瞬間の緑と大地のコントラストは、本当に美しくて心が洗われるようです。もう一つは、アルタンゴビのビールとチンギスハーン・ウォッカですね(笑)。モンゴルの豊かな自然と文化を味わえる場所や飲み物は、私にとって特別な楽しみでもあります。
ーー安全面の管理やサポート体制、特に力を入れている点について教えてください。
安全面は、当社にとって何よりも重要です。実は当社では、日本の保険会社と契約し、1000万円の保険に加入しています。万が一事故でお客様が亡くなられた場合も、日本の保険会社が遺族に必要な補償を行う仕組みです。こうした手厚い保険制度を整えている会社は、他にはほとんどないと思います。また、冬季ツアーでも安全を徹底しています。当社のバスはすべて昨年、新品のスタッドレスタイヤに入れ替えました。ドライバーに、シートベルトの着用や2時間ごとの休憩、健康診断の受診など、安全対策を毎年セミナーで指導します。さらに、モンゴル日本センターと協力してガイド講習会を実施し、ガイドの知識や対応力も強化しています。
ーー最後に、読者や旅行を検討している方々に向けて、ぜひ伝えたいメッセージはありますか。
モンゴルは夏の観光だけではなく、冬ならではの体験も魅力です。四季折々の自然や文化を、安全に楽しんでいただきたいと思います。
ーーインタビューありがとうございました。

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