デンベレル氏:日本・モンゴル民族博物館が開館30周年を迎える
社会
今年、豊岡市立日本・モンゴル民族博物館は開館30周年を迎えた。これを機に、モンゴル豊岡シルクロード友好協会のS.デンベレル会長に話を伺った。
ーーモンゴルの伝統文化や風習を紹介する博物館が日本にあることに、感慨を覚えます。この博物館は、どなたの発案で、どのような経緯を経て設立されたのでしょうか。
兵庫県但東町は1985年以降、大阪外国語大学(現・大阪大学)モンゴル語学科の小貫雅男 教授や今岡良子氏の支援を受け、バヤンホンゴル県ボグド郡をはじめ、「ゴビ」プロジェクト、ウランバートル市内中学校などと連携した交流活動を継続してきました。
1994年に、但東町で「森と砂漠を結ぶ国際シンポジウム」が開催され、モンゴル側から40人以上の関係者が招聘されました。
このシンポジウムの期間中、金津匡伸さん(故人)に対し、モンゴル人の生活文化に関するコレクションを展示してほしいとの要望が寄せられました。
金津さんは1990年代初頭、在モンゴル日本大使館勤務時代に民族学への関心を深め、モンゴル各地や内モンゴルで数多くの民族学資料を収集しており、その展示内容は専門家からも高い評価を受けました。
当時の町長、福田芳郎氏(今年105歳)は、町に博物館または資料館を設けたいという夢を抱いていました。そこで金津さんに対し、「もしコレクションを町に寄贈していただければ、博物館 を建設し、広く一般に公開したい」と提案しました。金津さんは、貴重な資料を個人で保管するよりも公に活用することが望ましいと判断し、全コレクションを但東町に寄贈されたのです。
その後、福田氏は博物館設立に向け、行政手続きや建設用地の確保、資金調達といった数々の課題を乗り越え、1995年12月に建物の基礎工事が始まりました。建設期間中、金津さんは展示構成や配置など細部にまで関わり、早朝から深夜まで作業を続けられました。その結果、広々とした空間を生かした美しい展示が実現し、博物館は1996年11月に開館しました。
私は、福田芳郎氏の夢と尽力、金津匡伸氏の貴重なコレクション、そしてモンゴルの民主化と市場経済への移行を支援してきた日本の人々の協力が重なり合うことで、この博物館が誕生したのだと考えています。
ーーこの30年間で多くの人が来館してきたと思いますが、年間ではどの程度の方が博物館を訪れているのでしょうか。
但東町は森林に囲まれた山あいの谷や盆地に位置する、人口の少ない町です。将来的な地域の発展を見据え、2005年に周辺四町とともに豊岡市と合弁しました。それ以降、博物館は市の予算によって運営されています。
2023年4月から2024年3月まで来館者数は累計5675人に上ります。来館者数はコロナ禍で一時的に減少しましたが、現在は増加傾向にあります。
ーー来館者が特に関心を持つ展示は何ですか。
展示品のおよそ2割は、古代日本の生活文化を紹介する資料です。これに加え、モンゴルの歴史や文化、暮らし、仏教の発展をテーマとした展示を行っています。館内で、モンゴルの伝統衣装「デール」の試着や、羊のくるぶしの骨を使った伝統遊び「シャガイ」の体験も可能で、体験型展示は特に好評です。
また、年に2〜3回、定期的に特別展を開催しています。これまでに「現代に受け継がれるモンゴルの工芸」、D.オルトナサン画家の作品展、切り絵作家S.テルボラム氏の作品展などを実施してきました。2025年11月に、馬頭琴馬頭をテーマにしたコレクション展も開催しました。
来館者からは、「館内のゲルの中に座り、モンゴルについて語り合う体験が特に印象に残った」といった声も多く寄せられています。
ーーモンゴルを旅行しようとする日本人は、事前にこの博物館を訪れると聞いたことがありますが。
実際に、モンゴルへの渡航を予定している人が事前学習の場として立ち寄り、現地について質問したり、関心を深めたりするケースは少なくありません。この博物館は、単なる観光施設ではなく、モンゴルの歴史や文化、暮らし、風習を総合的に紹介する、いわば文化センターのような役割を果たしています。
昨年から、モンゴル史を専門に博士課程を終了した水谷東洋研究者が勤務しており、来館者に対して、より専門的で正確な情報を提供できる体制も整いました。
ーー周辺を旅行するモンゴル人にとっても、立ち寄る価値のある場所だと思いますが、モンゴル側からの支援はどの程度あるのでしょうか。
現在、日本には約2万人のモンゴル人が住んでいるとされています。ただ、この博物館は関西地域にあり、立地的にややアクセスが不便なため、交通費などの負担を考えると気軽に訪れるのは簡単ではありません。
それでも、日本国内で唯一のモンゴル専門博物館であり、モンゴルの人々にとっても、自国の文化や歴史を日本でどのように紹介しているのかを知る貴重な場所です。機会があれば、ぜひ一度足を運んでほしいと考えています。
ーー近年、生徒間交流を拡大していると伺いましたが、これまでの取り組みと今後の展望について教えてください。
博物館の開館以来、モンゴル側からは長期・短期の研修生の受け入れや生徒間交流などが行われ、これまでに子どもたちを中心とするグループを12回にわたり豊岡市で受け入れてきました。日本側からも同数の代表団がモンゴルを訪問し、現地の中学校での交流や遊牧民の生活体験などを重ねてきました。こうした交流は、コロナ禍で一時中断を余儀なくされました。
昨年、豊岡市に「とよおか・モンゴル友好協会」が設立され、会長には、元但東町長の息子で豊岡市議会議員を20年間務めた福田嗣久氏が就任しています。また、昨年就任した門間雄司豊岡市長も、市として博物館の運営や学生交流を支援していく意向を示しておられます。今後は、まず学生の相互派遣による交流が再開されることを期待しています。
— インタビューありがとうございました。






写真は日本・モンゴル民族博物館の公式サイトより
Ulaanbaatar