モンゴルの人の“強さ・優しさ・ユーモア”に支えられて ― 日本語教育で二度目のモンゴル
インタビュー
(ウランバートル市、2026年1月12日、国営モンツァメ通信社)国際交流機関より日本語専門家として『モンゴル・日本人材開発センター』に勤務されている富岡史子先生に、モンゴルでの生活や日本語学習者の姿勢、両国の魅力についてインタビューを行った。
ーー自己紹介のほどお願いします。
富岡史子と言います。2025年の3月にモンゴルに来ました。モンゴルは二度目です。
ーーモンゴルに来る前の職業経験について簡単に教えてください。
1991年から日本語教師をしています。それで、今回もモンゴル日本人材開発センターに国際交流基金から日本語専門家として派遣されました。
ーーモンゴルに来る前、どんなイメージを持っていましたか。
モンゴルは今回は2回目で、前回は2010年〜2012年にJICAのシニアボランティアとして来ていました。その前に持っていたイメージとしては、とにかく広い草原です。本当に広い草原の国というイメージでした。実際に来てみて、それ以外はあまり具体的なイメージを持っていなかったので、「ああ、こういう感じなんだな」と思いました。特に大きなイメージとのギャップはなかったです。
ーーモンゴルに来ることになったきっかけを教えてください。
先ほども言いましたように、JICAのシニアボランティアで、日本語を教える、日本語教育をサポートするという募集があったので、それに応募しました。
――モンゴル以外の国もあったと思いますが。
はい、そうです。そのときは日本で、海外の方に日本語を教える日本語教師の仕事をしていました。色々な国から来る人に出会う中で、いつかは私も、その学習者の人たちが、どういうところで日本語を勉強して、ここに来ているのかを知りたいという思いを持ちました。ただ、子育てもありましたので実現するのはずっと先のことだと思っていました。末っ子が大学に行くタイミングで、JICAの募集を知りました。試しに応募してみたら合格して、特にモンゴルを希望したわけではありませんが、JICAから「行きなさい」ということでモンゴルに来ました。
――運命ですね。
そうですね。
ーー 海外経験ははじめてでしたか。
いいえ。アメリカに1年いました。かなり前ですが、1986年です。なので、海外で生活するのは2度目でした。旅行とかは結構行っていましたけど。
ーー 日常生活で困ったことや大変だったことはありましたか。
皆さんが親切なので、あまり困ったという記憶が、今思い出してもあまりないです。あったのかな。すぐ忘れてしまいます。
――なかったということにしましょう。
ーー食文化についてどう感じていますか?好きなモンゴル料理はありますか。
実は肉料理はあまり好きではありません。モンゴルは主食がお肉ですよね。ただ、自炊をするので、長い間主婦ですし、食材さえあればあまり困らず、日本風にしてしまいます。
ーー一番最初に来たのは10年以上前ですが、そのときは日本の食材はどうでしたか。
そうですね。思い出しました。15年前は食材に困りました。日本的な料理を作るには、食材があまり揃っていなかったですね。日本で使うような野菜も、高級なお店に行けばありましたが、日本だったら売られていないような、時間が経ったものが高い値段で売られていたりして、ちょっと買うのをためらう感じでした。
――今はどうですか。
今は食材も豊富になりましたし、本当に困らないですね。日本にいるような気持ちです。
ーーモンゴルの気候や自然環境についての印象を教えてください。
(モンゴルの寒さは)油断はできないんですけど、最初にJICAの面接で、「モンゴルはどうですか」と聞かれたときに、「モンゴルは寒そうだから、ちょっと行くのは…」と言ったんです。
どうしてかというと、足がしもやけになるので、寒いところは無理だと思います、と言いました。そのときは「そうですか」と言われたんですが、ふたを開けたらモンゴルに決まっていました。
困ったなと思っていたんですけど、お部屋がとても暖かいので、モンゴルに滞在した2年間は、しもやけにならなかったんですよね。だから、外が寒いというマイナスの印象よりも、「モンゴルにいるとしもやけにならない」という良い印象が強いです。
ーーモンゴル人との交流についてお願いします。モンゴル人の特徴や関わり方など。
最初に来たときは、顔は本当に似ていると思いました。日本語の先生として会ったときに、(学生から)「私の小学校の校長先生に似ています」と言われて、私も結構モンゴル的な顔なのかなと思いました。でも、性格は正反対だなと思うことがよくありました。いい意味ですごく強いという印象なんです。はっきりとものを言うとか。でも、強いんだけど、優しくて、ユーモアがある、そんなイメージを持ちました。
――先生は困らなかったですね。
そうですね。私は自分と違う人が好きというか、興味があるというか、あまり違うことにストレスを感じないタイプなんだと思います。
ーー当時の日本語学習者と現在の学習者に違いはありますか。
前回はモンゴル国立教育大学で教えていて、今回はモンゴル日本人材開発センターなので、学習者の層も形態も違いますから、単純に比べることはできませんが、若者はだいぶ変わったという印象があります。よりスマートになりましたね、いろいろな意味で。眼鏡をかけている人も多くなったように思います。
ただ、前回も教育大学の学生さんは皆素直で意欲がありましたし、その点はあまり変わってないように思います。
モンゴル人の学生で一番いいと思うのは、先生に対する尊敬の気持ちを持っているところです。そこは本当にいいと思います。今教えている学生さんたちもとても礼儀正しいですね。

ーーモンゴルの学生の日本語学習への姿勢についてどう感じますか。
私が2回もモンゴルに来た理由の一つは、モンゴルの日本語教育に関心があるからです。前回来たとき、地方で日本語を勉強している子どもたちに会いました。アルバイヘールのメルゲド学校の子どもたちでしたが、目をキラキラさせながら日本語を勉強している姿を見て、この気持ちをつぶさない日本語教育であってほしいと思いました。
65歳で日本の大学を定年退職したとき、最後に日本語教師として何ができるか考え、モンゴルであの子どもたちのために何かできないかと思い、この募集に応募しました。
モンゴルは人口は少ないですが、10万人あたりの日本語学習者の割合は世界一です。日本語はモンゴルの人にとって比較的習得しやすい言語だと思いますし、日本語が分る人が多いということは、人的資源として世界に誇れる強みだと思います。
――学習者へのアドバイスはありますか。
はっきりした目標設定ができると効率よく勉強を進めることができると思います。
ーーモンゴルの魅力について教えてください。
人ですかね。強さ、優しさ、ユーモア。日本人にとってとても良いパートナーになれると思います。考えすぎて動けない日本人と、さっと動けるモンゴルの人。日本人の丁寧さと組み合わされば、強力なパートナーシップになると思います。
ーー先生にとっての日本の魅力を教えてください。
私の中では、日本はとてもきれいな国です。整える力がある国だと思います。ただ、そこで止まってしまうところが、少し欠点かもしれません。
ーー 次世代へのワーク・ライフバランスのアドバイスをお願いします。
正直、ワーク・ライフバランスはあまり考えてきませんでした。4人の子どもを育てているときも大変でしたが楽しかったですし、今こうしてモンゴルで日本語を教えられていることも楽しいです。
結局その時できることをちょっと頑張って来たかなという気がします。なので、アドバイスとしては、今できることを無駄にしないでほしいということです。できないことを数えるのではなく、できることで楽しみながら道を開いていってほしいと思います。

ーーモンゴルでの生活や仕事を通して、自分自身の変化はありましたか。
もう年なので、大きくは変わりませんが、職場で何を言っているのかは分からないんですが、皆さんが楽しそうに笑いながらモンゴル語で話しているのをBGMに仕事をすると、とても捗ります。この明るさの影響は、毎日少なからず受けていると思います。
ーーこれからの志についてお願いします。
まず、この2年間でできることを精一杯したいと思います。来年の3月までの予定なので、病気をせず、最後までしっかり頑張りたいですね。
モンゴルの皆さんがすでにある日本語力を生かして、ぜひ自分の武器にして社会的にエンパワメントしていけるようにサポートできたらと思っています。
Ulaanbaatar