D.アユシ内部監査局長: 「為替政策には、政府と中央銀行の政策上の連結が大事」

経済
naranchimeg199@gmail.com
2018-12-18 10:52:22

 モンゴル銀行は「外国為替管理法」の改訂に向けて改正法案を国会へ上程中である。改訂される部分やその意義等について「外国為替管理法の一部改正に係る作業会」のメンバーで、同行内部監査局のD.アユシ局長に聞いた。


――世間では「外国投資の抑制」が懸念されている「外国為替管理法」の改正法案について大まかに教えてください。

 3つの改正を挙げておきたいと思います。まずは、意図的な為替レート変動の抑制に向けた為替市場取引や非市場取引に対する管理体制の強化と合理化を図りました。法改正により、為替市場での取引が容認されるのは、各銀行や金融規制委員会に為替の取引が認められたノンバンク金融機関となります。その一方で、故意又は過失を問わず、関係者が為替レート変動を招きかねない重大な未公開情報を漏らした場合、責任が追及されるなど規制も強化されました。2点目は、外国人投資家や政策決定者にとって判断の根拠となる正確な情報の収集回路の確保、国内為替市場に関する統括プラットフォームづくりなど、統括的為替政策の策定とその実施が出来ることです。

3点目は為替政策における政府の役割が明記されました。そのほか、通常のインターバンク取引の為替相場に加え、非市場取引を含む基準為替レートを確立。モンゴル銀行が公開する基準為替レートは、前日午後4時から当日午後4時の間で行われた取引値に基づきます。

 

――改正法案で政府の役割をどう位置付けしましたか。

法案第15条の定めによると、政府は外貨準備金増加計画の作成、実施方法、為替レート安定のほか、対外債務の安定、国際収支の改善などの役割を果たします。政府役割の明確化は、金融政策と財政政策の調節機能をもたらすのみならず、統一した為替政策を実施できる環境を整えました。

 

――改正法案の審議入り中、民間に対する「資産コントール」で強制的な手法を実施しようとしていると批判されていますね。その真相はどうですか。

 

 資産コントロールとは、簡潔にいうと、預金の流出などによる金融システム危機を防ぐための資金の流れを規制する措置です。

 世界各国は次の目的で資産の流れを規制しています。金融市場の不完全性を対処し、全体的な経済効果を高めること、固定為替相場制の国々が金融政策の自立性を強化し、為替レートへの圧力を緩和させること、海外からの急激な資本流入によるインフレや金融セクター不振などを抑えることを目的に金融システム危機を防ぐため、同措置を実施しています。一方、資産コントロールには、政府が資本支出の財源を確保し、産業優先分野を支援するために資本の流れを規制するという側面があります。高所得国は規制緩和下で厳しい規制がないわけですが、その反面、低所得国は厳しい規制を設けています。今回の法改正で世間から「厳しい規制」と警戒されているのは、おそらく第16条でしょう。第16条は「外国外貨の現金流入(流出)に対する規制」で、外貨の現金のみに適用されます。世界各国も、マネー・ロンダリング防止、テロ活動資金源根絶、租税回避などの対策を目的に、現金の持ち出し・持ち込みに対して上限額を設けて申告を義務づけています。また、自国通貨保護を目的に多額の現金を規制する国もあります。

アメリカ、カナダ、メキシコは約1万米㌦、イギリス、フランス、イタリア、ドイツは1万ユーロ、中国は2万人民元を上限金額としています。

 

――戦略的鉱床と指定された鉱山開発業者に対してモンゴル銀行の預金口座開設を義務づけるなど、まるで中央銀行が商業銀行と同様な機能を果たそうとしているのでは、との見解がありますが、どうでしょうか。

改正法の第104項は「モンゴル銀行は、国内経済及び国家予算歳入上に重要とされる戦略的な開発業者との合意の上で、法人に対して外国通貨預金口座を開設できる」としています。この措置は、モンゴル銀行の銀行業務を拡大させ、他の商業銀行との競争に巻き込むものではありません。

 

――為替市場調整へ政府機関が過剰に関わるという点で、投資家に警戒感をもたらしかねない、との反論がありますが、それについてどう思いますか。

 政府系より民間や個人に関わる権利義務の定めが多く盛り込まれました。法案作成にIMFが助言し、Gomiluk Otokwala (LEG)Thorvardur Tjoervi Olafsson (MCM)が協力した。

同行は、法改正に係る予備的調査を第三者へ委託しました。憲法や関連法律との抵触がない、との調査結果を得ました。同法案は、当事者間の交渉や合意形成を規制するものではありません。

 

――これまで度々論議の的となった外国為替管理を一体誰が行うか、という課題について教えてください。

 経済学には、国際金融政策において3つの政策を同時に実現できない国際金融のトリレンマというのが存在します。理論的には、自由な資本移動、為替相場の安定、独立した金融政策といった3つの政策から同時に2つしか実現できない、ということです。モンゴルは、変動相場制を採用し、資本の自由な移動を選びました。上程した改正法はそのままで成立すれば、金融政策と財政政策の調節仕組みができ、統一的な為替政策が実現可能になります。

政府は90年代の初頭以降、為替レート変動の際にモンゴル銀行の介入だけに任していました。為替介入は短期的な効果しか発揮できません。つまり、応急措置に過ぎず、むしろ効果がないのです。だから、為替政策には政府と中央銀行の政策上の連結が大事です。

 

――ありがとうございます。