エルデネダライ氏:生産性の向上、職員負担のバランス、多様な社会保障業務の推進を同時に
社会
(ウランバートル市、2025年7月20日、国営モンツァメ通信社)モンゴル国において近代的な警察機関が発足してから104年、国内軍が創設されてから103年の記念日、そして「警察・国内軍隊員の日」を迎えている。
1921年7月19日に開催された人民政府の会議では、警察の運営に関する課題が協議され、「アルバン・タブの警察」に端を発する治安維持機関が軍事省の管轄に組み入れられ、「治安維持軍」と称されたことが、現代の警察機関の起源とされている。この記念日にあたり、警察庁の外交関係・平和維持活動部のB.エルデネダライ警察大佐にインタビューを行った。
ーーまず初めに、モンゴルにおける警察機関創設104周年、国内軍創設103周年を心よりお祝い申し上げます。
ーどうもありがとうございます。100年以上にわたる歴史を歩んできた警察および国内軍のすべての隊員の皆さんに、モンツァメ国営通信社を通じて祝意を申し上げたい。
ーー警察機関と関わるようになったきっかけについて、簡単にお聞かせいただけますか。
ー子どもの頃から思い描き、夢を見ていた職業が、まさに警察官であった。私はフブスグル県エルデネブルガン郡で農家の家庭に生まれ、地方の静かな集落で地元の人々や年長者たちの教え、そして生きる知恵を学びながら初等・中等教育を受けた。当時、郡には警察官が一人だけ勤務していて、その警察官の立ち居振る舞いや知識、技能はとても印象的であった。何か問題が起これば、人々はまずその地域担当の警察官に相談し、彼はそれらを的確に解決していた。そして誰もが納得し、満足していた。そうした姿を見て、私の中に警察官になりたいという思いが芽生えた。人の役に立ち、助けとなり、正しいことには優しく、間違ったことには厳しくあるという信念も、まさに警察官から学んだものであり、この職業を志す原動力となった。私は2000年に警察アカデミーに入学し、「警察」という責任ある、そして名誉ある職務への第一歩を踏み出した。以来20年以上、公務員として、そして国民の一助となるべく、日々学び、成長し続けることを信条に、職務に励んでいる。
ーーかつては、国連平和維持活動(PKO)にはかつては軍関係者のみが参加するという認識がありましたが、現在ではその考え方は大きく変化し、警察、国内軍、非常事態庁など、治安機関のあらゆる部門から任務に就くようになっています。モンゴル警察を代表して国際的なPKOに初めて参加したうちの一人だと伺っております。警察を代表して現地に赴くというのは、大きな名誉であったのではないでしょうか。実際に南スーダンに実際に足を運び、現地の状況を体感したときのことについて教えていただけますか。
ー2015年から2016年にかけて、当時の警察庁長官であったR.チンギス准将が、平和維持活動にモンゴルの警察官を単独で派遣するという課題を掲げ、具体的な準備と措置を講じた。その結果、2016年にモンゴルの警察機関から初めて、南スーダンとスーダンの両国にそれぞれ2名ずつ、独立した警察アドバイザーとして派遣された。私はその最初の派遣メンバーの一人として、2016年から2017年にかけて任務に就いた。同期間中、他の警察官にも同様の機会を提供したいという思いが強まり、特に「警察部隊(ポリス・ユニット)」として160~170名規模での参加を目指し、それを自身の目標として取り組んできた。2022年に現在の職に任命されたことで、この願いと夢を現実のものとするチャンスを得ることができた。上層部や同僚の積極的な協力と支援により、法的枠組みの整備、必要な装備の調達、職員の訓練・準備体制の確立などの大きな課題を短期間で進めることができた。近い将来、初の大規模な警察部隊の派遣が実現すると確信している。

ーー警察機関の外交関係というと、一般の方にはあまりなじみがないかもしれません。しかし、国際協力や連携を強化・拡大していくことは、すべての機関にとって最優先の課題となりつつあります。これまでのところ、モンゴル警察の外交関係はどのように発展してきたのでしょうか?
ー犯罪の手口や傾向、効果的な対応策の策定、そして職員の専門知識や技能の向上、先進的な技術の習得・導入、さらに優れた事例の研究と実践などのニーズから、警察機関は外交関係や協力を拡大・強化しなければならない必然的な課題に直面している。具体的に、警察機関は国家の内政安全保障において中心的役割を担っていることから、世界で展開する国際関係のシステム要素の変化に伴う影響を認識し、潜在的なリスクを未然に防ぎ、効果的な対応ができる能力を保持することが重要となる。そのため、警察および国内軍は上記の理由に基づき評価・検討を行い、モンゴル国の外交政策および安全保障理念に則って外交関係や協力を推進してきた。現在では、世界中のいかなる国の警察や法執行機関とも犯罪や脅威に関する情報を迅速に交換し、連携する環境が整えられている。さらに、職員を法執行分野で名高い教育機関に幅広く派遣し、犯罪対策や公共の安全確保、秩序維持に必要な知識と技能を高める取り組みも進めている。
ーー警察については良い評判も悪い評判もさまざまな意見があります。今日、私たちのインタビューは国内外で多くの人に読まれることでしょう。この職業に20年以上携わってきた職員の立場から見て、警察の誇りとは何でしょうか?
ー警察とは、同職業を志し、自らを成長させ、国家と国民に尽くすことを決意した者にとって、最も素晴らしい職業であると同時に、最も安定した職場でもある。 モンゴル国の大統領オフナ・フレルスフが述べたように、国家の主権、安全、融和、理念を強化する使命を特に担っているのが警察職員である。 あらゆる物事には両面があるが、良い面が悪い面を上回っていることを多くの人が理解していると考えている。警察官は多くの場合、社会の暗い側面、影の部分で働く必要がある。長期間にわたり社会の影の部分で勤務すると、どんなに優秀な職員でも、目の前で起こる出来事や許しがたい事柄により、苛立ちやストレスを感じ、ミスを犯す可能性が高まる。 そのため、時にはミスをする職員もいる。 しかし近年、警察組織の指導部はこの状況を評価し、ストレス・マネジメント、すなわち怒りのコントロール(アンガーマネジメント)に特に注力し、専門の心理カウンセラーを積極的に配置して一定の成果をあげている。

ーー例えば、ストレスや怒りをどのようにコントロールしていますか?
―私自身はストレスや怒りを完全にコントロールできているとは言えない。しかし、職務を遂行する際には、世界中の警察官が持つ「プロ意識」「多様性の尊重」「原則への忠実さ」という基本を守るよう努めている。また、毎年9月1日の学校の始業式には必ず足を運ぶ。そこには怒りやストレス、悪意はなく、幸福と笑顔にあふれた最もポジティブな環境がある。この場所から一年間の活力を得ている。子どもたちの笑顔と幸福は失われてはならないものであり、そのために良い仕事をすると自分に誓い、力を得ている。この幸福に満ちた環境は他ではなかなか見られず、最も明るく希望に満ちた場所である。同僚にもこのことを勧めており、こうした環境を感じた者は誤りを犯さないと信じている。
――警察職員のメンタルケアはどのように行われているのでしょうか。警察はすべての問題の最前線に立っているため、挫折や意気消沈する時期があると思います。まさにそのような時に彼らのメンタルと向き合うことが重要ですよね。
挫折する時期は誰にでもある。しかし、10年ほど経験を積むと、挫折や心理的なプレッシャーは自然と和らぐものである。警察という職業は時間をかけて身につける仕事である。判断力を身につければ、挫折する問題自体が遠のくことが、国際的な研究でも証明されている。警察官は非常に多くの判断を下す。そのために挫折することはあるが、業務の過重さが原因で挫折することは少ないと思う。あらゆる問題に対して多角的な視点で考え、仲間とチームとして働くことができれば、仕事に対する挫折は減る。逆に、判断力が不足すればストレスが増し、それに伴い挫折する。警察官は様々な性格の人々と接するが、常にプロフェッショナルな態度を保たなければならない。つまり、どのような性格の人でも理解できることが専門能力の証である。そのためこそ、同僚たちには相手の性格に引きずられるのではなく、専門的なスキルを発揮してほしいと願っている。コミュニケーション能力を十分に身につけていれば、私たちの職員は問題を起こさない。判断は必ずしも大きなものである必要はなく、たとえ2分の判断時間のうちの1分でもよいので、その時間をしっかり考えることに使うことが重要だと思っている。
ーーそもそも、所管省庁や貴機関は、全警察職員の能力向上のためにどのような方針を持って取り組んでいますか。これまでにどのような進展がありましたか?
法務・内務省および警察機関は、職員の社会的保障を確保するとともに、職務を円滑に遂行するための知識や技能を向上させ、個人の成長を促進することで、市民に対する国家の責任を質の高い効果的な形で果たすことを、長期・中期・短期の計画に盛り込んで取り組んでいる。問題をできるだけ予測し、実際のリスクを減らすあらゆる手段を模索している。特に近年は、公務員の生産性、つまり職員の業務負荷と効率を高めることを目指し、科学的で多角的な施策を実施し、明確な成果と進展を上げている。社会保障の分野では、警察職員に法的に保障された権利を十分に享受させることや、住宅供給プログラムへの参加、平和維持活動への派遣など、多くの施策を推進している。
――モンゴルの各分野で人材不足が長期間にわたり大きな問題となっていますが、警察も同様でしょうか。人員数や人材確保の面ではどのように対応していますか?
―人材不足は我が国だけでなく、世界的な課題である。警察では新規採用を継続的に行っており、補充や安定した勤務環境の確保には依然として困難があるが、人材確保に関する適切な方針を実施した結果、初めて高い充足率を達成できており、これは管理能力の向上と関係している。
ーーお時間をいただきありがとうございました。最後に一言、全ての警察職員の皆さんにメッセージをお願いします。
ー次の世代はすべて、前の世代の歩みの上に立って今日に至っているという原則を自覚し、自分がどのレベルであれ、国家と市民に対する責任を負う公務員であることを認識して職務に当たるべきである。
また、自らの仕事によって国を築いていることを常に意識して取り組まなければならない。
モンゴルの歴史は計り知れないほど豊かであるが、同時に非常に痛ましい出来事にも満ちていることを忘れず、苦難の時代から学び、失敗や挫折から教訓を得て、祖先から受け継いだモンゴルの知恵や自身の知識・技能を次世代に伝えていくことは、誰にも代え難い責務であることを行動指針としてほしいと願い、訴えたい。