U-19/U-16モンゴル女子代表監督:河本菜穂子さん  女子サッカーの草分け めざすはAFC女子選手権予選

スポーツ
manduhai@montsame.gov.mn
2019-07-05 17:12:46

 この3月、日本サッカー協会から派遣され、モンゴル女子サッカーのU-19、U-16代表監督として赴任して来たのが、河本菜穂子さん。前任の壱岐監督から引き継ぎ、強化育成に当たる。めざすは来年行われるAFC(アジアフットボール連盟)女子選手権予戦。当面の目標は8月に韓国で行われるU-15大会だ。8歳から始めたサッカー歴40年の豊富な経験による指導に、大きな期待が寄せられている。一方、サッカー指導者として実績を誇る夫の河本雅彦さんと共に、子どものサッカー指導やスポーツイベント、企画などを行う「ロクアイクラブ」を運営。二人そろってA級ライセンスの有資格者。大阪市出身。

 サッカー場のスタンドに腰掛け、これまでの歩みと、今後の抱負をインタビューした。

――まず、モンゴルに着任しての感想はいかがですか?

 思った以上に便利で日用品は何でも手に入る。モンゴル料理も大丈夫。スタッフも良くて、今のところ困ることは全くないですね。ただ、乾燥だけが大変。着任早々、咳き込む日々です。


――海外での指導経験はおありですか?

 モルディブでは、女子ナショナルチーム代表監督を2014年から2 0 1 6年まで務めました。その後、世界一人口密度が高い国から正反対のモンゴルに来ました。


――サッカーは子どもの頃から始められたとか? 

 小学校3年生の時、地元のサッカー少年団に入った。当時、女の子は珍しかった。毎日、男の子と野球ばかりして遊んでいましたね。スカートをはくのがイヤで、いつも弟二人と一緒の服を着ていたので、母は、「男の子3人で大変ですね」とよく言われていた(笑)。中学ではサッカー部がなくバスケをやり、高校で大人のクラブチームに入ったが、当時は女子チームは少なかった。澤さんは私より7歳年下でしたが、中学時代から上手でしたね。その後、1989年創設されたLリーグ(現なでしこリーグ)に大学3年生の頃から入った。卒業後、企業に就職し、お給料をもらってサッカーだけをやっていた(笑)。あの頃はいい時代でした。26歳で引退。その後、アメリカへ語学の勉強に。視野を広げたかった。帰国後、少年たちにサッカーを教え始めた。これが私の指導者になるきっかけとなった。「将来、女子も指導者ライセンスが必要になる」と、ライセンスを取得しました。


――ご主人もサッカー関係ということで。

 主人は明治国際医療大学女子サッカー部で副部長をしていて、いまは日本中をまわり高校生のスカウトやサッカーの普及活動で忙しくしています。仕事の場は離れていますが、互いにサッカーを中心に協力し、支えてもらっています。


――モンゴルに話を戻し、女子メンバーについてお話しください。

 チームはU-19、U-16から選ばれた選手、各25人ずつ。去年、女子ナショナルチームが出来ました。基本的に、勉強と両立させている子を選んでいます。貧しくても才能のある子、インターナショナルスクールに通う裕福な子との2極分化していますが、みんな仲良くやっています。壱岐監督が3年かけて一から指導された、「礼儀正しさ、挨拶、片付け、時間を守る」などのしつけはとても良くなっていて、有難いです。


――モンゴル女子選手の特徴はなんですか?

 長所は筋力的にしっかりしている。日本の子とは身体のパワーが違う。そして勝負にこだわりますね。短所は個人主義的なところを感じます。日本人はチームのためにと考えるが、彼女たちの中には自分を目立たせたいと考える選手がいたことに驚きでした。


――練習で特に力をいれているところは何ですか?

 基礎練習と持久力強化です。


――海外遠征などがありますか?

 バングラデシュに行きました。4月23日よりモンゴルU-19女子代表チームは、バングラデシュのダッカで、バングラマラU19女子国際ゴールドカップ大会に参加。予選リーグではタジキスタンに0対3で勝ち、ラオスとは0対5で敗れて、準決勝ではバングラデシュに3対0で負けました。8月に韓国で東アジアU-15大会があるので、7月上旬、ナーダムの前に日本へ遠征して力を付けて来たいと思っています。


――チームに関して困った問題がありますか?

 モンゴルではまだまだ女子の数が少ないので、対戦するゲーム相手がいないことです。

――河本監督が達成感を味わうのは、どんな時ですか?

 選手と共に大会に参加し勝った時。結果がチームをひとつにしてくれます。また、やれなかった子が練習の中でやれるようになった時、嬉しいですね。


――今後の課題と目標は何でしょうか。

 育成年代の代表を強化すると共に、一人でも多くのモンゴルの子どもたちにサッカーの楽しさを伝えることです。目標はAFC U-19およびU-16女子選手権で共に最終予選に進出することです。


――最後に、仕事の疲れをリフレッシュするためにどんなことをしていますか? 趣味は?

 リフレッシュは家で洋楽を聴いたり、映画を観たりすることで、趣味はサッカー、スキー、旅行です。


――ありがとうございました。今後の活躍を期待しています。


取材を終えて

 くりっとした輝く目、少年のような雰囲気を持つ河本さん。この3月で4 8 歳になったとはとても思えない。サッカーの話となると淀みがない。常に前向きの話で、モンゴルライフも楽しんでいる。子ども時代のエピソードは屈託のない人柄を表していて、きっと選手たちに人気がある監督だろう。健康に留意してがんばってほしい。


※写真説明:バングラデシュでの大会に参加した選手たち。後列の右から3番目が河本監督