JICAモンゴル事務所設立25周年
社会 「JICAのサポートに感動した」という言葉をモンゴルで沢山聞く。「JICAという言葉を耳にしたことがない」というモンゴル人はいないほどの身近に感じられる存在である。日本のモンゴルへの協力は、1977年のゴビ•カシミヤ工場建設に係る無償資金協力から始まる。1990年のモンゴルの民主化、市場経済化以降には協力が本格化し、技術協力、有償資金協力、無償資金協力などの経済•社会インフラの整備だけでなく、人材育成を通じた協力を展開してきた。特に、これまで、モンゴルから研修員として5800名以上を日本での研修に受け入れるなど、モンゴルにとって日本は一貫してトップ支援国であり、JICAはその中心的役割を担ってきた。今年は、モンゴルと日本の外交関係樹立50周年、JICAモンゴル事務所の設立25周年を迎える節目の年である。弊紙「モンゴル通信」はJICAのモンゴルでのこれまでの協力及び支援内容の一部を紹介したい。
1)技術協力
日本の技術•知識•経験を生かし人材育成、研修員受入や専門家派遣などにより地球規模課題に対する科学技術協力や制度づくりを支援。事例:建設分野における労働安全管理能力強化プロジェクト、家畜原虫病の疫学調査と社会実装可能な診断法の開発プロジェクトなど
2)有償資金協力
円借款は、緩やかな融資条件で資金の貸し付けを行い、インフラ整備などを支援。また、海外投融資は民間事業を資金面で支える。事例:チンギスハーン国際空港建設事業、ツェツィー風力発電事業、ウランバートル第4火力発電所効率化事業、工学系高等教育支援事業など
3)無償資金協力
返済義務を課さずに資金を供与し、学校や病院など、社会·経済開発のために必要な施設の整備や資機材の調達などを支援。事例:ウランバートル市高架橋建設、ウランバートル市初等·中等教育施設整備、日本モンゴル教育病院建設、人材育成奨学計画など
4)市民参加協力
モンゴルと日本をつなぐ懸け橋として、日本からのボランティアが草の根技術協力事業などの様々な取組みに協働している。事例:ダルハンオール県における生活習慣病に対する保健医療改善事業、養蜂振興による所得向上プロジェクトなど。教育、保健医療、障害児支援、産業人材育成分野でのJICA海外協 力隊派遣
5)民間連携
日本の民間企業が持つ優れた技術やノウハウを活用し、モンゴルにおける多様化する課題解決に貢献。事例:分娩監視装置及び集中監視システム導入による周産期医療の質の改善のための普及実証事業、ラセッテーなめし技法を活用したモンゴルレザーのブランド化に関する基礎調査
主な事例:
1)チンギスハーン国際空港への協力(円借款•技プロ)
航空需要が増加する中、首都空港の安全性•信頼性を向上するため、新空港の建設を円借款で支援。また、新空港の円滑な供用開始、適切な運営•維持管理のための技術協力も行っている。
2)教育病院建設と医療従事者の能力強化への協力(無償•技プロ)
モンゴルでは、経験が少ないまま現場に派遣される医師が多く、医療人材の質の向上が求められている。そこで、JICAは、臨床実習を実施できるモンゴル国立医科大学付属の大学病院の建設を行う無償資金協力や、その病院で質の高い医療サービスを提供するとともに臨床実習を実施するための病院基盤を構築する技術協力、また医師や看護師になった後の卒後研修の改善を行う技術協力を実施している。
3)ウランバートル市大気汚染対策能力強化プロジェクト(技プロ)
深刻化するウランバートル市の大気汚染の緩和を目指し、これまでフェーズ1、2において大気環境モニタリングデータの管理•精度の向上や大気汚染対策を主導する組織体制の構築などを通じて、同市の大気汚染対策にかかる能力強化を支援。フェーズ3においては、より実効性のある大気汚染対策の実施のために支援を継続中。
健全なマクロ経済の運営とガバナンス強化
マクロ経済を安定的なものとし、持続可能な経済成長を実現するために、公共財政管理の向上を図るとともに、金融市場の強化や投資環境の改善などを通じた活力ある市場経済の推進を図る。
環境と調和した均衡ある経済成長の実現
首都ウランバートルへの一極集中を緩和し、鉱業依存の経済構造から脱却するために、産業多角化の推進と地域開発戦略の強化を図るとともに、経済成長を支える質の高いインフラの整備と環境に優しい安全な都市の開発を図る。
インクルーシブな社会の実現
所得レベルや地域による格差(教育、保健、福祉など)を是正するために、社会の状況に適合する保健医療水準の達成や基礎的社会サービスの質向上、障害者の社会参加•社会包摂の推進を図る。