日本政府のモンゴルに対するODAプレス・ツアー

経済
jp_dotood@montsame.mn
2015-09-21 14:17:13

 15日、在モンゴル日本大使館が恒例の「モンゴルに対するODAプレス・ツアー」を実施した。今回のツアーでは「質の高いインフラ投資」プロジェ クトによる太陽橋と建設中のウランバートル新国際空港の現場を視察した。「太陽橋」は2012年に開通した。起工式から3年後の完成である。日本政府の無 償援助によってできた「太陽橋」は、橋の長さ262㍍、総計633㍍の道路が竣工された。幅は19.5㍍で、両側にはそれぞれ1.5㍍の歩道がある。

日 本政府は建設事業に37億円を融資し、施工は日本の建設会社「JFE」が担当した。同社は世界のトップ5社の一つで、世界各国で鉄鋼施設や技術、鉄鋼製品 を供給している。橋建設事業のコンサルタントとしては日本の「CTI」が務めた。事業は日本政府の100%の融資によって実施されたため、建設とメンテナ ンスも日本の会社が担当し、モンゴルからは100人余りの従業員が参加した。

新国際空港の建設完成率当初プランより3.6%進む

日本政府円借款によって実施されている最大規模のプロジェクトは新ウランバートル国際空港の建設事業である。空港建設事業の過程についてN.エンフバト・プロジェクト・ディレクターが紹介した。
 ウ ランバートル市から54㌔、チンギス・ハーン国際空港から32㌔。トゥブ県、セルゲレン郡、ホゥシグティーン・ホゥンディーで建設されている新国際空港の 建設事業は、2017年に完成させるよう計画しており、実施率は現時点で56.8%、当初プランより3.6%進んでいると報告した。新国際空港の建設事業 は三菱商事と
千代田化工建設株式会社が共同で実施しており、約50企業の2100人~2200人が働いている。その内70%が国内企業で、85%をモンゴル人が務めている。
 チ ンギス・ハーン国際空港の稼動率は75%。また、気候によってフライトがキャンセルになるなど多くの問題があり、改修が重要になった。改修には約500億 米㌦がかかるという。そのため、モンゴル政府は新国際空港を建設することで解決し、2006年に日本政府に意見を出した。これは2年後に実を結び、 2008年に日本政府がモンゴルに対し、288億円限度の円借款を0.2%の金利で貸与した。さらに、2015年に0.1%金利の368億円限度の円借貸 付契約に調印し、日本政府からの円借款総額は656億円(約5億6000万米㌦)となった。円借款の償還期間は40年、据置期間は10年で、すなわち、モ ンゴルは11年目から返済し始める柔軟な条件である。
 プロジェクトのインフラ整備は、先端技術で建設されているのが特徴。例えば、モンゴル初の 地下ガス回収施設や長さ1.8㌔の電気、水、下水、暖房のトンネル・ネットワーク・エンジニアリング施設など約30の施設が建設される。また、3.6㌔の 滑走路が建設されており、ボーイング747航空機も着陸出きると専門家らが強調した。しかも、長さ9.6㌔のダムも先端技術で建設されており、実施率は 90%となっている。このように建設事業が行われているものの、モンゴルの国家予算で実
施される3つの施設の施行者が明らかになっていないため、日本側の事業より遅れる可能性があるとエンフバト・ディレクターが力説した。
 新空港は2024年度で300万人、2032年度ではGDP成長により4200万人の乗客を受け入れると計算されている。モンゴルにとって、2013年度が乗客のピ
ー ク時であり、110万人を受け入れたとの統計もある。2024年度からは新国際空港の第2期目のプロジェクトにより、空港の増築を行うよう計画しており、 ここ40~50年間では空港の稼動力に心配がないとプロジェクト団が報告した。増築により、6つのターミナルを20にすれば1200万人も受け入れるよう になるという。
新空港の建設によってインフラ整備、高速道路および10万人程度の衛星都市もできるとされている。

日本政府、対モンゴル無償援助から円借款に

  視 察後、大使公邸にて、清水武則駐モンゴル日本国特命全権大使および深澤公史一等書記官、JICAモンゴル事務所の沢田博美次長、モンゴル道路交通省のタミ ル担当者らが対モンゴル支援の実績と方向性について記者会見を行った。日本政府の対モンゴル開発援助は、1977年ゴビ・カシミア工場を設立することから 始まった。両国の経済協力は1989年まで技術協力と文化無償援助で制限されていたが、モンゴルの民主化後、市場経済になってから積極的に実施され始め た。日本政府の無償援助により、これまでに55校の学校が建設され、これら教育施設には2万4000人が学んでいる。また、ウランバートル市公共輸送力改
善、 ウランバートル市水供給改善、建築材料産業支援や道路建設など多くのプロジェクトが実施された。1990年から「草の根」無償資金協力も開始し、2015 年3月末の状態では、総計465の案件が実施されており、今後とも同プロジェクトは継続するよう計画されている。また、低金利で償還期間の柔軟な円借款を 貸与しており、モンゴルにおける鉱山施設の改善、火力発電所の改善計画、新国際空港などメガ・プロジェクトを実施している。日本政府はこのように市民生活 に必要なインフラ整備を行って来たが、2015年3月末現在、モンゴルへの支援総額は2380億円となっている。
 今後、日本政府の対モンゴル開 発援助は無償援助と円借款の形で行われるが、最近、モンゴルの国民総所得(GNI)が成長しているため、無償援助は減少しつつある。清水大使は、「モンゴ ルは発展しており、一人当たりのGDPが4000㌦になっているため、今までのような無償資金協力ではなく、これからはソフトローンが援助の中心になり、 日本のソフト・ローンは、モンゴルにとって有利な条件である」と強調した。また、清水大使は「他国の援助、すなわち、中国の援助は、金利が2%で、償還期 間は20年です。そのため、日本の円借款は、モンゴルにとって負担が少なく、質の高い協力です」と力説し、モンゴルの政治家にぜひ「日本の円借款を有効に 活用し、国づくりを進めてください」とアピールした。

コメント