ナランバータル氏:石炭価格が20%~30%上昇、可能性が確かにある

経済
naranchimeg199@gmail.com
2019-02-20 09:51:33

中国の石炭輸入量トップはオーストラリア。その量は全輸入量の44%に及ぶ。しかし、オーストラリアは、131日から連日、記録的な豪雨に見舞われた。特に、石炭輸出にとって主要な拠点となった同国北東部クイーンズランド州では、鉄道が被害を受け、一般炭や原料炭ともに、運搬が停止されているという。

クイーンズランド州における豪雨災害がモンゴル産石炭輸出へ影響等について経済学者L.ナランバータルに聞いた。

――オーストラリアでの災害は、世界市場における原料相場を動揺させている、と思いますが、原料価格の高止まりがどのぐらい続くと思いますか

 オーストラリアは以前も、似たような洪水被害に見舞われたことがあった。その時、災害復興に3カ月~4カ月しかかからなかった。今度、危機管理体制が整えられているといえ、少なくても1カ月半で治るだろう。その間、クイーンズランド州からの産出がなくなるわけだ。

――オーストラリア産石炭の輸出が大幅に減ることは、モンゴルの石炭業を後押しする、とのお考えですが、1カ月半とは非常に短い期間だと思われます。その間、モンゴルは状況をうまく利用できるのでしょうか

オーストラリアが過去15年間で、5回も洪水や台風など、自然災害に見舞われた。災害が発生する度に、原料炭の価格は1㌧当たり150米㌦~380米㌦に跳ね上がっていた。今回は、中国が石炭供給側と今後の売買価格を決める春節後に重なったことがポイント。だから、これまでと状況がちょっと違うし、モンゴル産にとってチャンスだ。

――オーストラリアの洪水以外、その他に石炭の価格を上昇させる要因がある、との指摘がありましたが、それについて説明下さい。

まずは、クイーンズランド州の災害だ。そのほか、「Coal Mongolia」イベントの共催者、中国のSXcoal.comの報告によれば、中国のバイヤーが春節前に確保した石炭量が十分とは言えず、その後に一気に買い取りを急ぐ可能性が高いという点だ。

3つ目は、米中貿易戦争が続いていることだ。不透明感は6月まで続く見通しだ。一見、2つの大国間を取り巻く貿易摩擦のように見られるが、貿易関係各国がその影響を受けるわけだ。オーストラリア政府が米国に追随してファーウェイ5G(次世代移動通信システム)から排除した。サーバー安全保障上の問題と、理由をつけた。中国も、オーストラリア産の原料炭に規制をかけるなど応戦した。こうした状況は、原料炭の価格上昇の追い風となる。

――モンゴル産石炭の価格はどうなりますか

上述したように、春節後ということがポイント。中国側も今後の取引価格を決めるから、より慎重になると思う。海外市場での新規株式公開を企むエルデネス・タワントルゴイ公社もこのチャンスをうまくつかんでほしい。つまり、今の炭鉱からの1㌧当たり68米㌦~70米㌦出荷価格を90米㌦に出来る絶好の機会だ。

中国春節前の一週間の主要な国境税関所における石炭取引価格は1㌧当たり230米㌦~250米㌦となる。モンゴル産の輸出先とボガト検問所で1㌧当たり230米㌦。シャンシ検問所は250米㌦。中国の港で240米㌦であった。一方、エルデネス・タワントルゴイ公社は70米㌦。エナジー・リソース社は1㌧当たりを175米㌦で売っている。

――産出量についてどうですか

ETTが本年に第4層からの産出を計画。ここからの石炭は、洗炭すれば、炭素含有量90%上になるものだ。ETTは、第4層の石炭だけを産出し、石炭価格が高止まりを続くと、年商も大分上がる見込みだ。

――輸出量についてどうですか。専門家の一部は「鉄道なしでは、条件が整えたとしても、石炭輸出に限界がある」と悲観的な指摘をするが、それについて立場を聞きたいですね

確かに、鉄道があれば効果も大きかったと思う。仮損失を試算してみよう。ETT7200億トゥグルグの営業黒字。出荷価格は1㌧当たり70米㌦。鉄道があったら、出荷価格を100米㌦で取引していた。輸出量は1000万㌧とすると、昨年だけで損失は3億米㌦となる。

――ETT配当に関する政府の決定と国民の立場が食い違っていることは、ソーシャルメディアで指摘されているが、これについて立場を聞きたいですね

経済学者としては、ETTを長期的なビジョンを持ち、競争力を上げて活用してほしいと、願うばかりだ。そのため、ETTに対する設備投資が必要である。少なくても、30億~40億トゥグルグで製鋼工場や火力発電所、鉄道敷設といった必要な事業を推進できる。ETTIPOもそのためだと思う。設備投資を行い、フルキャパシティを引き出さないとダメ。

一方、ETTが積極的に設備投資を行って拡張すべきなのに、そうしないでむしろ配当しようとしていることが矛盾している。政府も同社のIPOに消極的だ。配当金があくまで次期総選挙を配慮した上での決断としか思われない。

――最も炭素含有量が豊富な層だけを掘るというのは、本当に効率的なやり方ですか

 本当は、炭鉱にとって良くない。有効活用という概念に欠けるやり方だ。相場が高止まりしている間、含有量が多い方と少ない方を混ぜて均等価格で売れば良い。しかし、2019年は総選挙の前年であるから、公社である以上は収益を上げないといけないので、炭素含有量が多い方を掘るだろう。 

――本年における中国の動向は

 中国は今年、7500万㌧の輸入を計画。中国は普段、オーストラリア、モンゴル、ロシア、インドネシア、カナダから合わせて7500万㌧~8000万㌧を輸入している。一方、今年は、ロシア産石炭輸入量がおよそ2倍増えると、フェンウェイ・エナジーが独自の見解を発表している。ロシアも中国市場を精力的に狙っている。

――モンゴルは、国家歳入で石炭4200万㌧の輸出量を計画。価格上昇が収益を上げると思いますが、量的な目標数値にたどり着くのでしょうか。リスクはありますか

今年度は、4200万㌧を輸出して13000億トゥグルグ相当の収入を計画。目標達成のため、一日平均1500台のトラックが行き来しないといけないが、年明けから国境を通過する輸送車両が激減した。たったの350台ぐらい。

一方、ロシアが中国向け石炭輸出の拡大を図ると、輸出競争は激化される懸念がある。だから、量産的に4200万㌧は厳しいかもしれないが、高価で取引される原料炭を積極的に輸出すれば、目標収益を達成できる。昨年度の輸出を分析してみると、原料炭は全体のおよそ15%足らず、残りは一般炭であった。原料炭を全体の3割にさせる必要がある。MAK社は、ウスフ・ゾース洗炭工場を完工させた。また、モネンコン社も工場に係るF/S調査を終えた。2019年は、モンゴルの石炭業が新たな時代を迎えるに違いない。