イルヴァン氏:「モンゴル産羊毛は改良の余地が十分ある。国際相場より安ぎする」

経済
manduhai@montsame.gov.mn
2019-09-09 13:27:52

 アドラ(Adventist Development and Relief Agency) 国際人道支援活動のアジア地域支部がモンゴル産羊毛に対して調査を行っており、ブルトン・イルヴァン・アジア地域支部長に話を聞いた。 

 ――国内のどの地域において現地調査を行いましたか。

 ダルハン・オール県、セレン ゲ県、バヤンウルギ―県、ホ ブド県、ザブハン県において現地調査を実施。モンゴル産羊毛に関する調査は初めてだ。調査中、一つの気づいたことがあった。それは、羊はモンゴル気候、即ち極寒の冬を凌ぐため、 厚い脂肪があるという点だ。 もう一つはウール原毛が極めて堅いこと。しかも、堅い毛と柔らかい毛の2段となっている。 堅い毛はフェルトやカーペットの原材料に適している。ザブハン県のサルトール種(ヒツジの 種)かは、比較的に毛が柔らかった。その上で、それをさらに柔らかく出来る可能性があることも確認できた。先も述べた通り、ヒツジの耐寒性を損なわずに原毛だけを柔らかくすることが出来る。但し、これは繊維の太さを細くする意味ではない。 モンゴルの研究者らは1943年、 ニュージーランド産メリノの凍結精液をモンゴルのヒツジ原種に受精させ、新たなハンガイ種の繁殖に成功した。ハンガイ種の毛は柔らかくなったが、繊維の太さは21マイクロン。メリノ種は13.3マイクロンだ。

――モンゴル産ウールは非常に安く取引されていますが、国際市場のウール取引価格とは?

 ウールの取引価格は、繊維の太さで決められている。細くなるに連れて高く取引される。モンゴル産は繊維が太いため、1kg500トゥグルグ~1000トゥグルグの間で取引されている。これに対し、メリノ種の原毛は通常およそ250米㌦で取引さ れる。品種改良のための交配・ 繁殖を適切に行えば、高く売れる可能性が十分ある。ハンガイ種の場合、取引価格はおよそ9 米㌦ぐらいだろう。加工すれば 22米㌦に跳ね上がる。しかし、モンゴルでの価格は約6000トゥグルグ前後。これは安すぎるだろう。先ほど話した繊維が太いモンゴル原種のヒツジの場合、原毛がフェルトやカーペットに適しており、取引価格も3米㌦前後だ。もう一つ分かったのは、モンゴルのウール市場が非常に不安定であることだ。つまり、変動が激しい。昨年1㎏当たりが5000トゥグルグだったのに、今年は500トゥグルグ~1000トゥグルグまで下落している。需要と供給の変動で価格が決められているのは確かだ。効率性と継続的な安定収入を確保するためにウールの品質を上げないとダメ!。ウールの品質を確立すれば、価格変動を受けることなく1㎏当たりを7000トゥグルグ~8000トゥグルグで売れる可能性がある。 

――ハンガイ種について詳細な調査を行いましたか。

 もちろん、調査済みだよ。ハンガイ種はメリノ種の特徴をおよそ75%伝承している。オルホ ン種は50%。言い換えると、ハンガイ種はほぼメリノ種で、オルホン種は半分メリノというわ けだ。だから、オルホン種の毛は堅い。繊維も22~23マイクロンぐらいのはずだが、現在は28 ~31マイクロン。ハンガイ種は繁殖当初、繊維が18マイクロンであったが、不適切なケア等で 21マイクロンまで太くなったわけだ。ハンガイ種とメリノ種をさらに交配させることで、87% ~88%メリノ種に近い品種改良を行える。繊維も細くなるはずだ。オルホン種の場合、元の22 ~23マイクロンに戻れる。

――モンゴル産ウールは世界に通用できるわけですか。ちなみに、値段が一番高いのはどこ 産ですか。

 もちろん、その可能性は十分ある。だが、国内体制の未整備で課題もたくさんある。流通網の整備が緊要だ。ニュージーランド産とオーストラリア産のメリノ種は最も経済的とされてい る。そもそも、メリノ種は寒さに弱く、モンゴルの極寒に適しないだろう。メリノ種との段階 的な交配を通じて、モンゴルの 原種を品種改良すればいいと考える。

――モンゴルの原種ヒツジの原毛に綿毛がたくさん含むと先ほど指摘がありましたが、メリノ種と交配でそれが改善されると考えでよいですか。

 ハンガイ種に関して言うと、綿毛が確認されなかった。綿毛のない原毛は、毛刈りから洗毛 されてそのまま糸になる。モンゴルの原種ヒツジは毛刈りしてから綿毛の選別を施さねばなら ない。モンゴルは、ヒツジが多いのに1頭当たりからの毛刈りは少ない。これは改善できる課題 だと思う。

――モンゴルは伝統的に放牧を営んでいるが、近年は酪農業が注目を浴びており、専門家も積極的に推しています。これについてお考えを聞かせてください。

 酪農と放牧も効率性を上げる方法はある。放牧業に関しては注意すべき点は一つある。それは牧草が生育する期間を絶対に設けることだ。現地調査でこの実態に関して重大な問題に瀕したことが分かった。つまり、土壌の劣化が著しく進んでいることだ。土壌劣化は植物連鎖に影響し、家畜成長を遅らせる。モンゴルの気候条件と降水量の少なさから、放牧してから約45日~60日を明けておくことを勧める。一方で、酪農業を営むに、 放水整備付きの耕地が要る。雨などの自然降水に頼ることはできない。酪農業は相当の整備機械を要するわけだ。両方もいけると思う。

――現地調査で遊牧民との接触がありましたか。

 彼らは、ウールの品質と増産に関して関心がありましたか。それはあったよ。彼らも良く分かっていたが、我々も啓発活動を行った。モンゴル人はウー ルより食肉の生産を気にしてい た様子だった。食肉用と羊毛用と特別目的のための品種改良を行うことも出来る。

――モンゴルは国内生産のウールを今より高く取引を行うにどうしたらいいのでしょうか。  

 まずは、毛刈りはハサミではなく、毛刈り機でしてほしい。 ハサミで刈り取った羊毛は長さ がバラバラになるため、値下げの原因となる。二つ目は、ウール相場をよく観察してほしい。 その上で、羊毛選別を実施すると値段が上がることを覚えてほしい。遊牧民はヒツジを認識別 するためにペンキを塗っている ようだが、それも値下げを招いてしまう。一番大事なのは「相互信頼」で、遊牧民が原材料の生産者としての認識を持ってほしい。モンゴルは国土が広く、放牧地がたくさんある。その面で、潜在的能力を有する。畜産統計調査を見ると、2006年に比べると、モンゴルの家畜頭数は何倍も増えていることを確認できる。頭数の増加は「良い」ことだが、牧草地の劣化を招きやすい。そうなると家畜の成育状況も悪くなる。これを注意すべきだ。

――ありがとうございました。いろいろ課題が見えてきました。今後の活動を期待しております。