チメド氏:環境意識が高い国になるには 50~80年ぐらいかかる

社会
41@montsame.mn
2017-05-15 12:54:08
 ウランバートル市内では、毎年春先から行う事業の一つが環境緑化事業である。その一環で、既存の公園や並木、植栽基盤の保全が行われる。今年は、UB市役所が環境緑化事業でどんな計画があるのかを、首都知事緑化事業顧問のB.チメデ生物科学博士に聞いた。

――ウランバートル市は、市民一人当たりの緑地面積はどのぐらいですか?国際的にどうでしょうか。
 調査では、諸外国の国民一人当たりの敷地面積は、15~18平方㍍だという。1990年代まではUB市もこの水準を維持できたが、それ以降、地方から都市に向けた住民移動で緑地面積は減少した。国や地自体は財政困難であったため、環境緑化事業も失われた。同時に地価相場も高騰したため、市は次々と住宅地化してしまった。今は、市民一人当たりの緑地面積は一人当たり6平方㍍ぐらいだ。
 
――ウランバートル市の環境緑化事業予算規模は?
 年間50~60億トゥグルグだ。

――ウランバートル市内で最も適した緑化樹木は?
 近年、生垣をよく植えるが、本当はマツの木などを植えてからにすべきだ。人々は、大きな木は簡単に枯れるというが、UB市役所前にある植木は10年ほど前に植えたもので、今も元気だ。

――緑地と都市開発の関連性について教えてください?
 緑化事業は、都市開発の一部である。UB市は、緑地をその面積の4割までに拡大させる方針だ。また、市内道路や建物に対する2割の緑地保有を義務つけている。
 
――2020年まで、市内緑地はどのぐらいの大きさになるのでしょうか?
 市民一人当たりの緑地面積を約6.2㎡と見込んでいる。
 
――今年度の事業については?
 UB市平和通りに1700本の植木を植える計画がある。関連企業の130社に対して競争入札を行い、落札した会社が平和通りでの植木事業を請け負う。

――ゲル地区における緑化に関しては?
 ゲル地区は、約3万㌶の面積があるが、各世帯の所有敷地のおよそ4割、つまりゲル地区全体の1万2000㌶はやせているわけだ。各世帯も敷地内で緑化を手掛ける必要がある。必要というよりそうすべきだが、緑化の問題点としては、降水量の少なさだ。韓国などの諸外国に比べると、モンゴルの年間降水量は極めて少なく、せいぜい110~120mmぐらいだ。飲料用水の確保がままならないのに、植木には限界があるのが悩みだ。ゲル地区再開発の請負者は緑化事業も行えば、問題解決への一歩になるが、実際に全くしないのは問題だ。ゲル地区再開発において、各世帯の所有土地に対してマンション一室の提供じゃなく、彼らの土地をインフラ整備につなげさせるべきだ。
 
――庭師育成について教えてください。
 社会主義時代は、緑化や植木等を専門とする庭師を指導する専門学校があった。今は、3つの大学で林科学や林業学科で専門家を育成している。庭師は、「エコ・モンゴル」専門学校で学ぶ。2014年度は約300人の卒業生がいたが、その半分が庭師として活躍中だ。月給は75万トゥグルグぐらいだ。

――大統領の発案で、毎年、木を植えるようになりましたが、植えた木は順調に育っていますでしょうか。
 個人的には、大衆動員で植木するのは、間違えていると思う。これは、専門機関の管轄下で、業者が行うものだから。UB市での植木事業は1940年代から始まったが、その間、何百万の木を植えたが、結局は大半が枯れた。原因の一つは、誤った都市開発政策。また、手入れの不十分さ。最も大変なのは、遊牧民の植物に対する意識の低さだ。遊牧民は元来、植物栽培に対して縁がない民族であるため、植物栽培および保全、成育といった考えがない。今のモンゴル人は都市暮らしに馴染んだように、植木に対する手入れや知恵を習得する必要がある。しかし、こうした意識や理念が定着するまでは長い時間がかかる。若者は、他者の行動に対して無関心でそれへの情がないから、人々が一生懸命に植えた木を翌日には踏んだり、折ったりしてしまうぐらいだ。諸外国では、植木を大事にする意識が高く、わが子のように扱うほど大切にする。この意識がモンゴルにはないわけだ。木を植えてから、その後を全くというほど気にしない。これは間違いだ。UB市民には、市民だからこそ市内にある植木を大事にするという意識を定着させねばならない。

――こうした環境に対する意識を改めるには、なにをすべきですか?
 義務教育の一環として、学生たちに環境を意識させることが重要だ。学生たちには、木を植える方法、手入
れの仕方などを教えるべきだ。環境意識が高い国になるには、50~80年ぐらいはかかるでしょう。
 
――ありがとうございました。いろいろな課題が見えてきました。今後のご活躍を期待します。
 
本紙記者:Ch.アリオンボルド