アマルバヤル国立大準教授:産業振興には、モンゴル的なやり方 を見出さなくてはならない

特集
41@montsame.mn
2017-12-06 11:21:07
日本帰国留学生たちの活躍ぶり(シリーズ III)

アドヤバト・アマルバヤル氏
1995年、日本へ留学
1996年、国立木更津工業高等専門学校に 入学
1999年に東京農工大学に編入学
2001年、同大学修士課 程
2003年に博士課程を卒業
42歳 現在、モンゴル国立大学応用科学工学部で准教授として活躍中
国 際特許事務所IPPI社の取締役員

――まず、モンゴルでの活動につ いて話を始めたいと思います。
   国立大で、再生可能エネルギ ー担当の準教授として活動中。 主に先端技術導入及び移行や普 及活動だ。海外で開発された先 端技術のモンゴル移行、その応 用、気候等に合わせての改良等 である。主たる活動は、再生可 能エネルギー資源の埋蔵量の確 定や日射測定、耐久性の測定、 製品性能の比較及び評価という 技術研究的な面があれば、法的 環境における企画や政策助言、 利用者に対する技術の認知度向 上や知識普及でもあり、大学と しては、国の持続可能な発展へ の寄与である。また、大学は気 候や消費者のニーズに合わせて 既存の技術に対して再設計した り、その実証や改良などをした りしてモンゴル普及のモデルづ くりを行っている。

――日本では大学研究所と企業の 連携が行われ、技術開発を進める ケースが多いですが、モンゴルの 場合はどうですか?
   モンゴルは少ないが、連携す るケースもある。円借款プロジ ェクトの1000人エンジニア育成 プロジェクト枠で、日本の大学 と共同研究も行う。例えば、太 陽熱システム研究開発や真空式 の太陽熱による暖房システムと いった太陽エネルギー利用シス テムの研究開発を行っている。 また、その太陽光パネルの劣化 試験なども。また、東京農工大 学への教え子の留学支援。中央 大学との太陽エネルギー利用に よる食肉冷凍システムに関する 研究開発もしている。

――日本留学への決意と動機は?
   社会体制の変換はモンゴル人 が先進国に行ける機会を意味し た。自分は先進国に留学して、 先端技術を学ぶ気持ちが強か ったからだ。けれど、あまり自 信がなかったので大学枠ではな く、不合格のリスク回避のため に高専枠で国費留学生の試験を 受けた(笑)

――高専で電子制御工学の専攻 から大学進学では再生可能エネ ルギーに、この進路変更のきっ かけは?
   進学でモバイル通信技術 か、再生可能エネルギーとい う進路選択に迷ったことがあ った。いずれもモンゴルが最 も必要とする分野であった からだ。進路相談で、ある高 専の教授に再生可能エネルギ ー研究に携わっている東京農 工大学教授の研究室を見てこ い、と言われて見に行ったと ころ、その教授が「自分は モンゴルで研究をしているか ら」と言ってくれたので、再 生可能エネルギー研究に身を 投じた。

――当初から博士課程まで行くつ もりでしたか?
   高専卒業してもまだエンジニ アになっていないということが あって、この先まだ勉強しなく てはいけないのかと勉強して いたら、いつのまにか修士から 博士まで行ってしまった。当初 は、博士までいくつもりは全く なかったのだが、担任教授に、 「君に合うよ」と説得されたか ら。結果的に非常に長い留学と なってしまったが、家族と一緒 に楽しく過ごせたよ。

――家族と言えば、もしかして学 生結婚ですか?
   長女は自分が20歳、国立大学 2年生の時に生まれた。大学進 学後、家族を日本に呼び寄せて 一緒に暮らした。

――日本で家族と一緒に暮らす方 になかなか帰国が難しいと聞きますが、モンゴル帰国の動機は?
   正直に言って、長すぎたか なとの思いからだ。子どもた ちにも、自分たちがモンゴル 人であることを感じてほしく て帰った。子どもたちに対し ては少々無理やり感はあった が、帰ってきてよかったと思 う。1995年の留学生は6人だっ たが、その内2人が帰国。残り はまだ日本。彼らが帰らない 理由は、やはり子どもの学校 や家族のことを思ってだ。

――エンジニアとしてモンゴ ルと日本での研究活動に違い があるでしょうか?
   もちろんありますよ。モン ゴルの場合、この国に必要な もの、ある意味で世界から見 るとレベルの低い研究をして いる。これに対して、日本の 場合は最新かつ国際的な研究 ができるわけだ。

――モンゴルにおける技術革 新とその効果をどう評価しま すか?
   社会全体の能力は足りない と思う。大学の准教授として は、その教育活動の一環とし て教え子が問題解決力やスキ ルを身につけるよう努力して いる。というのは、モンゴル 社会にある問題を意識し、そ れに対する解決策を理論的に 考える人が少ないからだ。

――産業基盤が弱い国では、 技術革新というのは非常に無 理があるように見えますが、 これについてどう考えます か?
   その通りだ。非常に革新を 起こしにくいかと思う。戦略 的に考えると、モンゴルは非 常に軽量かつ付加価値の高い ものを製造しなければならな いが、いろいろな意味での水 準がまだ上がっていないた め、結構難しい。ただ、他国 と同様なモデルで産業振興を 図ろうとしても、結果が同じ とは限らない。やはり、モン ゴル的なやり方がなくてはな らない。

――国有企業は、人材にせ よ、資金力にせよ、技術開発 に対して一番余裕があるはず ですが、これについてどう考 えていますか?
   本来は、国有企業が技術開 発に対して資金や人材がある はずだが、実際はそうではな い。ほとんどが赤字運営で、 人事等の問題で安定した政策 の実施も難しい。逆に、民間 企業の方は元気で、研究開発 に対して積極性がある。

――いろんな課題が見えてきまし た。今後のご活躍を期待していま す。ありがとうございました。