日本とモンゴルを繋げ世界へ アパレル・ブランド「HushTug」

経済
naranchimeg199@gmail.com
2018-04-25 09:21:07
 EPA(経済連携協定)発効以降、モンゴル産業が日本に進出するチャンスが大きく広がっているが、モンゴル産業にとって、自国の資源を使って現地で生産したものを国内外に供給することは、かねてからの課題だった。そのビジネス・モデルが一歩ずつ前進しつつある。
 
 モンゴル製の皮革製品とカシミヤ製品をアパレル・ブランドとして立ち上げた「HushTug(ハッシュタグ)」は、モンゴルの原料と日本の技術の組み合わせをモンゴルで実現した。
 先駆けて日本でインターネットを通じて販売したレザーバッグは、すでにレザー愛好家を中心に評価を得ている。実際にモンゴルの皮革は高品質で、加工技術が向上すれば、世界的に有名な高級ブランドと変わらない品質の商品をほぼ半額で販売できるのが魅力だと、同ブランドを運営するラズホールディングス株式会社代表取締役の戸田貴久さんは言う。従来のモンゴルの革製品は原料の品質は優れているものの、デザインや加工技術の問題で安っぽく見えてしまうのが課題だった。

 そこで戸田さんは自ら工房に出向き、高級ブランドのバッグと職人の作品を比較、研究しながら、デザインや縫製の質を近づけた。バッグのファスナーや研磨剤などの材料は日本のものだ。これで、モンゴルの素材と日本の技術を組み合わせた製品が仕上がる。今も高品質・低価格のモンゴル製ブランドの商品作りに向けた研究には余念がない。「その国の良い素材を使ったモノづくりを通じてその国の可能性を伝えたい」というコンセプトで始まった同ブランドを通じて、原料から製品になるまでモンゴルで仕上げたものを世界に紹介することで、モンゴルを発展させたいという願いが込められている。モンゴルレザーの特徴として、モンゴルの大自然の中で育った動物の皮革は、丈夫で革本来の質感が感じられ、天然素材ならではのキズやシワがある。通常レザーではキズなどのついた部分は廃棄されることが多いが、戸田さんは「天然の革を無駄なく使うことで、自然の中で生まれ育ったモンゴルの動物たちの命への尊厳にもつながると思う」と語る。モンゴル第2のカシミヤ・ブランドEvseg 製カシミ日本とモンゴルを繋げ世界へアパレル・ブランド「HushTug」EPA(経済連携協定)発効以降、モンゴル産業が日本に進出するチャンスが大きく広がっているが、モンゴル産業にとって、自国の資源を使って現地で生産したものを国内外に供給することは、かねてからの課題だった。そのビジネス・モデルが一歩ずつ前進しつつある。ヤのマフラーは、今年2月中旬に試験販売を開始した。これらはHushTugがデザインを出して発注し、直接日本に輸送することで一般的に日本で販売されているカシミヤ製品の半分ほどの価格が実現した。凝ったデザインよりもシンプルなデザインで消費者のニーズにこだわった同ブランドならではの商品だ。
 ブランドの公式サイトでは、製造過程のコストをすべて開示しており、中間業者などを通さず現地から直接調達することで無駄なコストを省いた。戸田さんによれば、このコンセプトは製造にかかる本当のコストと裏側を知ることで商品に愛着を持って頂き、本当に必要なものだ
けを購入して欲しいという気持ちが込められている。また、セール販売が常識であるアパレル業界は「本当の原価はいくらなの?」と不審感を抱く消費者へのニーズにも合っている。もちろん、EPAも功を奏し、輸送コストも抑えられている。そして、生産者が見えるこのシステムを発展させ、将来的にイベントなどでビデオ通話や工房見学などを行い生産者と消費者を繋げることも考えている。

 戸田さんは27歳の若さでモンゴルに渡り、同ブランドを立ち上げた。きっかけは知人を通じて初めてモンゴルを訪れた一年半ほど前、自身の持っている服の製造原価の安さを知り「なぜ日本ではこんなに高く売られているのだろう?」と疑問に思いアパレル業界について調べ始めたことだ。その後、ファストファッションが世界的な社会問題になっていることや流通のムダが多いことを知り、もっと業界を良くしたいと感じたという。また戸田さんはこれからモンゴルを担っていく若者たちのために何かしてあげたい、という思いで自身と同じ若い世代への投資も行っている。製品の背後にある生産者が見え、原料を通じて命を感じることで、消費者もモノを大切にしようという思いが一層強まることだろう。駆け出したばかりの日本とモンゴルの若者たちの願いは、製品を通じて広まりつつある。
 

HushTug(ハッシュタグ)公式ページhttps://hushtug.net