日本のNGO・ALL NET、全国小中40校に手作り理科実験教材寄贈、モンゴルの科学教育分野に貢献と感謝される

社会
gombosuren0625@gmail.com
2021-10-28 12:37:56

 10月21日、モンゴル国立教育大学イノベーションセンター内の講堂で、日本のNGO「ALL Life Line NET(通称ALL NET 城所卓雄代表)」が教育大学と10年以上にわたって取り組んで来た「全国の義務教育学校に手作りの理科実験教材器具配布プロジェクト」による理科教材セットの寄贈式が行われた。式典には遠くホブド県からの教師をはじめ、各地の教師や研究者、学生たちが参加した。

 ここ2年、コロナ禍の影響で様々な遅れがあったが、現地の「もの作りセンター」はスタッフ8名と学生の協力により寄贈250個のすべてを手作りで仕上げ、全国の40校(うちUB市は28校)に手渡された。冒頭の挨拶でモンゴル教育大学研究イノベーション担当のD.ナランツエツエグ副学長が、「教育大学70周年のイベントのひとつにこの寄贈式が行われて嬉しい。義務教育学校の理科系の学力と質を高めるために、ALL NETの協力でプロジェクトは2013年から始まった。2017年から日本人専門家の指導でモンゴルの教師が手元の材料により手作りで実験器具を作り始め、2018年の全国20校への配布に続き、今回2回目の配布が実現した。これはモンゴルの科学技術分野への大きな投資として日本政府に感謝する」と謝意を述べた。次に在モンゴル日本大使館から菊間茂参事官・大使代理が日本政府支援によるプロジェクトの目的を、「機材供与を通じた理科実験の普及、理科実験教材を用いた教育手法のワークショップを通じた伝授、もの作りセンターから民間企業への技術移転を通じた教材のビジネス化」とし、自らの小学生時代に初めて顕微鏡をのぞいた時の興味ある体験を披露し、「この事業を通じ、今まで黒板上で学習していた授業が実際の実験を通じた授業となり、生徒たちが科学への興味を高めてくれることを期待します」と祝辞を述べた。また、もの作りセンターのR.バザルスレン所長が義務教育の中での物理学の重要性を説き、物理はその国の特徴を生み出し、想像力を高め、自立した生き方を教えるものだと強調した。「生徒には実践が必要。この教材が五感を育て、やる気を起こさせる」とし、実践に基づく教育に変えて行こうと当時の城所日本大使に相談した。

 「城所大使のおかげで日本の無償支援につながり、今の成果を得ている。モンゴルの遊牧民の祖先が持つ創造的なもの作りの伝統を活かしながら日本の技術と合わせ、発展させて生きたい」と熱心に語り、日本政府、在モンゴル日本大使館、ALL NETに感謝したいと結んだ。最後に、受け取る側を代表して、トウブ県の第4小中校のO.ドラムスレン校長が、「単に寄贈されるだけでなく、同時に教師たちを教育するのがこのプロジェクトの特徴。輸入品ではなく、モンゴルで作られた器具だからモンゴル語のマニュアルがあり、修理の際にも役立つ。日本政府および関係者、もの作りセンターの皆様に心から感謝する」と謝意を述べた。一方、城所代表は、「コロナ禍のためモンゴルへ行けなくて残念。プロジェクトを始動させた市川事務局長と私たちは、この教材が子どもらに届き、理科授業を楽しく学んでくれることを願っています」とメッセージを寄せた。

 将来的にはモンゴルで教材を安く作り、全国750校に配布できるよう、日本とモンゴル両国政府に理科教育を通してエンジニア育成のための資金協力を要請していく。企業にもビジネス化の働きかけをしていくという。いまの現場では、貴重な機材が壊れないよう、教師が実験を行って見せ、子どもらには実際に使わせていない学校もあるらしいが、これは今後の課題であろう。