カシミヤはモンゴルの財産

経済
b.undrakh@montsame.gov.mn
2023-03-21 08:41:42

全世界のテキスタイル生産量は2021年に1900万㌧であり、動物繊維は1.7%、その内、山羊獣毛繊維が0.02%を占めるという。この貴重な繊維資源の48%がモンゴル、50%が中国、残りがイラン・アフガニスタン・カザフスタンで生産され、世界市場に供給される。モンゴルの羊毛・獣毛生産量は山羊頭数によるが、年平均1万㌧にのぼる。この78割が洗毛工程のみで、1割近くは整毛工程済み、残る1割強が製品化され、国内・国際市場に提供される。テキスタイル産業の総輸出量の9割を山羊獣毛が占めるという。わが国では洗毛された羊毛・獣毛に全40の工場で計6017㌧分の整毛工程能力があり、その25%しか使用されていない。言い換えれば、12035㌧の原毛を洗い、混在するうぶ毛と刺毛を分離する整毛工程能力は備わっているため、国内で生産される年平均1万㌧の羊毛・獣毛の全てが整毛可能となる。


テキスタイル産業の総輸出量の9割を山羊獣毛が占めるという。わが国では洗毛された羊毛・獣毛に全40の工場で計6017㌧分の整毛工程能力があり、その25%しか使用されていない。


 202255日の定例国会で「ウールとカシミヤの生産能力向上、支援措置について」閣議決定した。同決定により、付加価値のあるウールとカシミヤ製品の生産促進及び輸出量の向上措置が内閣に一任され、生産加工力を段階的に上げることで最終製品の生産能力の向上を図ることを目的としている。今年から、粗毛等を取り除く整毛工程の次の段階工程能力も上げることで国際規格を満たす高品質な羊毛製品の輸出を可能にする狙いだ。これに伴い、生産工程や貿易過程における規則類整備、また、整毛工程の次の段階工程能力を上げるための機材調達において免税対象化するための法案をまとめ、国会に上程する予定。1月、産業振興委員会のトゥムルトゴー・エンフトゥブシン委員長、ジグジド・バタジャルガル国会議員、ジャダンバ・バタエルデネ国会議員、ダシゼヴェグ・アマルバヤスガラン内閣官房長官、ハヤンガー・ボロルチョローン食糧・農牧軽工業大臣らが繊維産業界代表らと同産業分野の現状及び昨年の閣議決定における生産工程や貿易促進措置について意見交換した。


 20221019日の閣議決定第380号で「山羊獣毛生産及び流通貿易に関する規制」が承認された。本規制で「輸入・輸出用山羊獣毛の混在する刺毛含有率は0.3%以下であること」と指定され、整毛済み山羊獣毛のみが輸入・輸出されるよう定めている。同技術的規制を課すことで洗毛獣毛の輸出を防ぎ、4500㌧の整毛済み獣毛材料と210万個のニット製品を輸出し、計66000万米㌦の売上が見込まれるという。同時に繊維業界全体の売上高が29400万米㌦増加するという。これらにより、既存の2200人分の雇用維持に加え、約4400人分の新たな雇用創出が見込まれると関係省庁の報告書に記載されている。整毛済み獣毛材料の輸出量は202211月時点で8091㌧にのぼり、前年同月比2.2倍増加した。現状維持が可能ならば、今年の同獣毛材料の輸出量は急増するに違いない。2021年に整毛済み山羊獣毛1㌔当たり92米㌦、2022年には108.3米㌦で売買され、全輸出量の9割相当をイタリアのバイヤーが購入するという。また、ウールとカシミヤ生産の促進措置の一環で、整毛工場を新たに12ヶ所に新設する計画があり、計43の整毛工場が稼働すると公表された。




 2021年の閣議決定第42号「健康保全・経済復興の10兆トゥグルグの総合計画」の一環で非鉱業系の主輸出品である繊維系製品生産のため1219億トゥグルグ分の融資を24の国立生産工場に充てた。国内の外貨準備蓄積に特段に貢献する繊維分野及び生産工場において2022年に3200㌧の原料購入が可能となり、市場の原料価格を158000トゥグルグにのぼる程の需要を生んだ。また、2022年末時点で繊維分野の輸出額は44530万米㌦に達し、COVID-19パンデミック前の2019年に比べ15.8%、2021年と比べ33.4%増加した。輸出増加に加え、国内産業における安定雇用が確保でき、技術改良も期待される。


 このように、昨年の国会議決議第9号及び閣議決定第380号に定めた措置は、繊維産業分野において、整毛工程以上の技術浸透を進め、規格に沿った高品質製品の生産及び輸出量向上に多いに貢献するものと考えられる。繊維産業界代表らは「世界獣毛原料の半分近くを生産するモンゴルは2022年までは洗毛加工された獣毛材料だけを輸出していたが、付加価値のある製品生産工程の発展・輸出を促進する第一歩となった」と国会・内閣に対し謝意を表した。今後、産業発展のための政府政策の恩恵を願うばかりだ。