かつての江戸-現在の東京 (1) 視察紀行

社会
41@montsame.mn
2017-05-15 10:39:19
東京都
 
 かつて江戸という名称、後に明治維新で東京と名付けられた日本の首都に、4月17日から、5日間、S.バトボルド首都知事兼ウランバートル市長を長とする一行が訪れた。
 今年の春は例年より涼しかったため、少し遅れて満開の桜が我々を迎えてくれた。普段は4月の上旬に花が散り落ちてしまうというが、今年は多くの人々の目を喜ばせなが4月の終わりまでもちこたえてくれたのだ。一行が東京にたどり着いた夜は、雨が降り、傘を差して歩く人込みが通りを飾っていたが、翌日から気温が20度に上がり、暖かく快晴の日々が続いた。東京都庁の45階からは晴れた日にだけ見えるといわれる万年雪の富士山の頂上を眺める幸運に恵まれた。


 現在の東京は世界で最も発展していて、最も人口の多い、最も経済力の強い、最も安全で安心、最大級の地下鉄網など、多くの「最大」となった都会の一つである。人口1350万人もいるこの首都には、世界の一流企業500社のうち50社余りが揃っている。これにはトヨタ、ソニーなど日本を世界に響かせた巨大企業が含まれているのはもちろんだ。人口密度が高く、国際金融都市であっても、市民は穏やかで親切であり、道を通る誰に声をかけても心から教えてくれるのがとても感動的だった。東京都の街づくりは良く熟考されていて、どこに何があるかがすぐ分かる。ここを訪れるのは観光客のほか、出張で会議やセミナーに参加してから、自由時間に観光して帰る人々も多い。そういう意味で世界的にも観光客にとって快適な都市と言えるだろう。外国からの観光客のほか、国内の観光客も多く訪れるのが、ホテルを出入りする大勢の人々を見ても明らかだ。ここ数年、中国、韓国、台湾からの観光客が増えていると、駐日本モンゴル国大使館のスタッフが話してくれた。

 日本は経済力では米国、中国の次、世界3位に入る国であり、住民の生活水準も高く、社会保障も完備されている。新入社員の給料は2000米㌦から始まり、平均月収は約3500米㌦。これらが社会への不安が少なく、平穏な環境整備だけでなく、長生きする基盤になっているのだろう。一方、日本の伝統的文化や価値観、発展による物心両面の影響などがここの国民が満足いっぱいに生きる主な要因となっている。
 我々がよく言う「七回計ってから一回切れ」というロシアから由来した慣用句がある。「真剣に考えてから決断する」というよく似た慣用句を東京で耳にした。外国人は「日本人は8回計っても切らないでやめるかもしれない」ともいう。日本人は問題を長い時間をかけて検討してから、決断する、だが必ずしも認める必要はない、信用できなければ、問題を放って次へ進むという。通常、日本人はある案件を5~10年も続ける場合があるが、もし、協力をし始めさえすれば、それは永遠に続くという。

 人類の平和と融合の象徴といわれる第32回夏季オリンピックが、2020年に東京で開かれる。おおよそ3年後に行なわれるオリンピックの準備事業に関する話をすると、仕事を年、月、週、日、時、分で計画する日本人の性格についての話になった。東京オリンピックに際して多くの建設事業があるが、主な事業はまだ始まっていないという。計画された一部の建築物の土地を解放する交渉が進んでいると報道されている。だが、東
京オリンピックの開始日には全てが整っているだろうと、駐日本のモンゴル外交官らは信じている。というのは、日本人は最初に全ての計画の青写真を作る。計画が決まれば、その計画通りに事業を進める。事業の実施期間を日、時、分で立て、期間内に完全に終了する。
 現在、この首都ではオリンピック象徴を宣言するキャンペーンが実施中である。東京都の小池百合子知事がS.バトボルド首都知事兼ウランバートル市長との面会の際、部屋の壁紙は2020年のオリンピック・シンボルマークで飾られ、面会の最後にオリンピック象徴のバッチを贈ってくれた。また、都庁職員たちの名刺にはオリンピック・シンボルマークが載っている。オリンピックを広く知らせる様々なパンフレットを印刷し、都
民たちに宣伝していた。
 
東京都の問題点と解決策

 超発展国にはマイナス点もある。日本では少子化、引篭もり、遅い結婚、一生結婚しない、家庭や子どもに対する責任から逃げるなど、ストレスからくる精神的変化が現れている。家では一人暮らしを望み、ドアや窓などを閉め、夜に人が少なくなってから外へ出て必需品を買い、一部は人とのコミュニケーションを嫌がり、デリバリーサービスで注文する日本人が増えていると聞く。現代の日本の若者は男女問わずに遅い結婚の傾向にあり、これにより、人口増加率がこれまでにない最低の比率となり、日本政府には解決方法を探るべき重要な課題の一つになっている。また、高齢化による平均寿命も伸び、他方、出産率が減りつつある日本を、将来、老人国家の危険に押しやりつつある。従って、この国の関連機関はここ数年、大規模な調査を行ない、解決方法を探っている。
 東京都は世界大都市にある大気汚染、交通渋滞、廃棄物による自然環境への悪影響など数多くの問題点があるが、それらの解決方法を見つけ、最初から解決しつつ進んでいる。
 以前は、交通渋滞が直面する問題だった、これを段階的な措置で解決できた。それは市民の「自家用車は快適で速い」という考えを「公共の乗り物を使うと自家用車と同じくらい快適で速い」と考え方をかえるためのアピールをし、それを実際に感じさせたのである。自家用車より快適であるため、渋滞を起こす必要はないと考え、大半が地下鉄やバスを利用するようになった。
 1964年の東京オリンピックでは、東京都の大気汚染の原因は産業化による煙だったが、現在、大気汚染の主要因は車の排気ガスとなる。そこで、東京都庁管轄の東京都環境科学研究所が自動車による大気汚染の調査を実施し、調査結果と勧告書を関係機関に提出し、様々な措置を取っている。ハイブリッド車、水素自動車などの導入は、大気汚染対策の重要な結果であろう。

 一方、日本は土地が狭く、廃棄物処理問題にずっと悩んできた国である。特に東京は日本の首都だけでなく、産業の中心地。ここからは大量の廃棄物と汚水が出る。このゴミ問題を東京都市計画ごみ処理場が担当する。ここのセンターの廃棄物加工工場は東京都21区の家庭及び産業廃棄物、下水処理場からの汚泥処理のほか、汚水浄水、大気汚染、水質を分析し、都民に報告する。廃棄物処理では人工島を作り、今後、人が住める、企業が活動できる環境を作るという。日本のもう一つの特徴とは市民がゴミを分別していること。紙、ガラス、プラスチック、生ゴミなど燃やせる・燃やせないゴミとして分け、リサイクルするのも慣れたことである。国土が狭いため、莫大な資金を投入し、ゴミを自然に有害の少ない方法で埋め立てるしかないのだ。これは先進国が自然にやさしい対策を採っている傾向の表れであり、その一つの事例としては、東京オリンピックの優勝メダルなども携帯電話の部品をリサイクルすると発表し、自然にやさしい廃棄物処理を呼びかけたパブリックリレーションズとなっている。
 ウランバートル市にとってもちょうどこの方法での廃棄物処理が経済的にも有益だとJICAが調査を行ない2008年~2012年までにナラン廃棄物処理場でプロジェクトを実施し、それ以降もこの技術を引き続き利用している。「ウランバートル市の首都整備局は一日3000㌧の廃棄物をナラン、モリンダワー、ツァガーンダワーゴミ処理場で埋め立てている。2013年から中国から3台のブルドーザーを購入したが、故障が止まらない。機械は高価なため、希望数を購入できないが、今年の予算に3台のブルドーザーの購入を予定している。「我々には機械と資金が不足している」と、首都整備局のB.ビャムバドルジ局長が語った。一行が視察した東京都市計画ごみ処理場は、潤沢な資金と性能の良い機械能力に基づいていることは明らかだった。また、ゴミをいかに少なくするか、あるいはゴミにしないようにするかという人々の意識改革を重視しているという。

 東京都の下水の25%を賄う森ヶ崎水再生センターは一日に154万立方㍍を浄水し、化学的な方法ではなく、微生物を使って浄水し、東京湾に放流している最大の工場である。東京ではこのような水再生センターが20ヶ所あるが、森ヶ崎水再生センターでは50種類の微生物を使い浄水し、海に放流するだけでは
なく、機械の掃除、水撒きに浄水を使うという。 S.バトボルド市長は同センター視察の際に「東京都の水再生センターは本当に最先端技術を取り入れた処理場です。ウランバートルの最も直面する問題は下水処理場です。古い下水処理場の修理作業をウランバートル市役所が単独で担当しているこの時期に、この施設を視察し、参考にするものが多くあった。JICAがウランバートルの下水処理場のフィージビリティスタディ(FS)を作成した。これには処理場を全体的に改革する必要があるとか。だが、全てを改革するには一度の投資では難しい。そこでJICAとは段階的に改革する話を進めている。一方、JICAがFSを作成したので、日本側に協力を提案するつもり」だと話した。ウランバートル市長は東京都知事との面会、共同通信社のインタビューの際に、これらの問題を取り上げ、今後、ウランバートルと東京間の協力関係を新段階に持ち上げたいとの考えを明らかにした。
本社副社長:Sh.バトボルド