モ ン ゴ ル ・ ゲ ル で 世 界 を 飾 る

カルチャー
41@montsame.mn
2017-07-11 17:13:55
 今回は、モンゴル人の伝統生活と遊牧民の特徴を保持しな がら現在の定住社会の需要に合った作品を紹介しよう。こ れは四季にわたり、どこにでも組立てして利用できる「ア ヤンチン(旅人)」組立式のモンゴル・ゲルであり、乗用 車のトランクにも入れることができる、大工の神業によっ て工夫されたユニークなゲル(住居)である。
 モンゴル生活の特徴は、モンゴルのフェルトのゲルな しでは想像できない。しかし、現在の定住の生活様式 は、伝統的な住居のゲルからは遠く離れつつある。例 えば夏、旅行の際に雨に漏れやすい輸入テントより、 誰もが快適なモンゴル・ゲルを立てることを望むであ ろう。だが、伝統的なモンゴル・ゲルは保管するには スペースが必要で、持ち込みするにも複雑である。そ こで、この需要を敏感にキャッチし、モンゴル・ゲル の全てのパーツをパズルのように組立てる作品が「ア ヤンチン」ゲルである。組立式のトーノ(屋根)、二 十に組み合わせるハナ(壁)、アコーディオンのよう に広げる扉、パズルのようなストーブなどなど・・・ この作品の発明家、D.バトソーリさんにインタビュ ーした。彼は本来は通信エンジニアだが、大工に深い 興味を抱く人である。
 
――モンゴル・ゲルのサイズを小さくし、組立 式のゲルを作るというアイディアはいつ誕生した のでしょうか
 父はゴビアルタイ県のボガト郡出身で、「大工 のダワー」という名前で現地の人々に知られてい た人でした。幼い頃からハンマーや斧の音のなか で育っていたので、大工の作業を親しく感じ、 好奇心を持っていました。日常生活に必要なたく さんのものを発明していた父を誇りに思っていま す。70年代に父は組立式のストーブを開発し、そ れが多くの遊牧民に愛用されていったのです。そ れについては、モンゴルのドキュメンタリー映画 にも残されています。次に父は組立式のゲルや、 冬用のテントを開発したが、それを完成させずに この世を去ったのです。集めていた道具や器具が 家に残されていて、ある日、それらを見ていて、 私のゲルを作るアイディアが生まれました。



 ――もともとモンゴルのゲルは壁、屋根、オニ など別々のパーツから形成されます。この組立式 のゲルは伝統的なゲルよりどう異なり、何が特徴 になりますか。
 モンゴル・ゲルの木材はサイズが大きく、馬車 やラクダが運べるように工夫されており、長いパ ーツから形成されています。そこで、私は伝統的 なゲルの内容と形をそのまま生かし、現代に合わ せて小さく作り、乗用車のトランクにも入れるよ うに「折り畳み」ができるのが主な目的でした。 もし、伝統的なゲルをそのまま保管すれば、マン ション住まいの家庭の場合、もう一つの倉庫が必 要になり、移動するにも軽トラックで運ぶ必要が あります。しかし、私が発明したゲルはバルコニ ーに置き、乗用車のトランクに積めるのです。こ れが最大の特徴になります。
――モンゴル・ゲルの全てのパーツをどのよう に折り畳みますか。パズルゲームのように外した り、組み立てたりするにはどれぐらいの時間がか かりますか。
 
 ゲルの木材を組立式に調整するに際して、 最も大変だったのはトーノ(円形の天窓を作 る木材の器具)でした。これは通信用のアン テナからの発想でした。ハナ(柳の枝で作っ た木組みで壁の芯になる)を横から折り畳め るようにするほか、上から載せるためにつな ぎ合わせるようにし、オニ(柳の枝でできて いる屋根を作る芯で88本が基準)をはめてと めるように工夫したのです。全てを外してケ ースに入れると50キロぐらいになります。組 み立てるには20~30分で十分です。最初は、 自分用のために一戸作り、地方や保養所へ持 って行っていました。乗用車で行っているの に、あっと言う間にゲルを立てると、人々 は不思議そうに眺め、興味を寄せてくれまし た。テントと比べると、快適でスペースも広 く、風通しが良く、購入した人はみんなが愛 用してくれています。
――スペースが広いといいますが、何人ぐ らい入れますか。中にストーブを置き、火を おこせますか。折り畳めるストーブをおきま すか? その値段は?
 もちろん、可能ですよ。中で火をおこし、 お茶や料理も作れます。簡単な家具も置ける ということでテントとは完全に違います。ま た、風や雨にも強いです。今後、組立式のゲ ルに合う家具も作ろうと思っています。かまどや小さなアブダル(ゲルに置くタンス)も 作るつもりです。家具を置くと外国人には面 白いでしょう。サイズは3種類あります。小 型は85キロ、中型90キロ、ジープ用の大型は 150キロで直径5メートルです。10~30人ぐら い入れます。値段はサイズにより120万~180 万トゥグルグ。ここ数年、値段は変わってい ません。



 ――外国人はどれぐらい興味を示していま すか。
  観光客や海外に滞在するモンゴル人がよく 注文しています。現在、「アヤンチン」ゲ ルは日本、ドイツ、スイス、アメリカ、カ ナダ、韓国、ハンガリー、チェコ、オーラン ド、トルコ、イタリア、ノルウェー、イスラ イル、スウェーデン、フランスまで届いてい ます。今後「モンゴル・ゲルで世界を飾る」 という目標を立て、「アヤンチン」ゲルをブ ランド化し、キャンプ場やストアと協力する 計画です。
 ――組立式のゲルで全国の展示会や新作の コンクールに参加されましたか。
 2回ほど展示会に参加したことがありま す。ベスト作品の展示会の際に来場者は、 「4つハナ(壁)のゲルが2つだけのかばん( 大きな袋)に入れるのか」と驚いていまし た。トゥブ県で開催された「一村一品」展で ベスト作品に選ばれました。「アヤンチン」 ゲルは父から授けられたものですから、ゴビ アルタイ県のボガト郡の博物館に一戸を作り 寄贈しました。「大工ダワー」の息子さんが 作った組立式のゲルということで、地方民が とても喜んでくれているそうです。
モンゴル商工会議所: E.アディヤスレン