高岡正人日本国特命全権大使、任期を終えて帰国の途へ 彩り深いモンゴルの3年間、人と人の交流と充実した日々に感謝

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2019-12-12 12:16:38

 2016年12月にモンゴルに着任し、約3年の任期を終えた高岡大使は19日、帰国の途についた。その直前、多忙な時間の間を縫って大使執務室でインタビューをお願いした。

 ――任期を終えるにあたってのご感想を?
 モンゴルの3年間は実に彩り深く、その魅力は尽きない。大変充実した日々を送ることが出来ました。また、モンゴルの姿をさまざまな角度から見ることも出来ました。
 ――日・モ両国にとって意義深かった主なものは何でしたか?
 いっぱいあり過ぎて難しいが、一番自分にとって光栄だと思ったのは、5 月1日にモンゴルの人々と令和の始まりを祝う「天皇陛下御即位記念祝賀会」を公邸で催した際に、驚くほど大勢の方々がお越しくださった。歴代大統領や元首相、国会議長や現職の閣僚など政府をあげて集まってくださった。ソーシャルメディアでその集合写真を見た人が合成写真じゃないのですかと言ったくらい。これは日本とモンゴルの関係がいかに深くなったかという証です。本当に名誉なことで、ここまで盛り上げて頂いたことは、有難かったです。
 ――新国際空港や教育病院については?
 新空港の運営契約を日本と結んだことは、戦略的にも大きな意義がある。 内陸国でロシアと中国の大国に挟まれたモンゴルだが、空は自由。モンゴルにとって重要な飛行機の運営を日本がするというのは、とても大きな意義を持つ事業だと思うのです。日本の存在をモンゴルはもとより、外国にも発信できる。日本の企業がここでうまく仕事が出来れば、他の企業にも良い影響を与える。飛行機の運営はそうしたシンボリックな意味合いが大きいですね。来年の開港を大いに期待しています。また、教育病院はモンゴルで初めての大きな病院。普通の病院じゃない。日本式病院として医学界に大きな 歴史を刻んだ。最先端医療というだけでなく、患者の反応では看護師さんの対応がいいという。こうした日本的な良さが運営に生かされていくのは喜ばしいことですね。地元の皆さんから地方の方までご利用いただける。 
 ――草の根無償資金協力などで全県を廻られたということですが。
 草の根で行ったほかに個人としても 行って21全県を見て来た。自分としては現場をキッチリ見て、行政の方々や学校や病院などその地域の人々の思いなども知って見たいと思った。その現 場感覚がその地域をいっそう実感でき、こうしたら喜ばれるのではないかなと考えが至っていく。プライベートでも色んなところに足を運び、モンゴルの魅力に触れました。
 ――個人的にはどの県が最も印象深かったですか?
 バヤンウルギー県です。タワンボクドの山々、そこの文化や大自然がすばらしく2回も行きました。また、フブスグル県やホブド県なども。フブスグル湖では氷上で車を走らせた。楽しくて、モンゴルは実にワイルドです。 
 ――今後、どんな分野での協力促進を期待していますか?
 ビジネスです。そして、人と人との 交流の絆がもっとより一層強くなってほしい。
 ――3年間で見たモンゴル国民の印象はどうでしたか。
 初めは予想もしなかったのですが、 一番の印象はおしゃれ。また、自分に対する自信と誇りですかね。
 ――大使館が関わったイベントで は、着物ファッションショーなどありました。なかでも印象深く良かったものはなんでしたか?
 色々ありましたが、うれしかったの はホワイト・ロック・センターで行ったW杯サッカーのパブリックビューイング。あれはよかった! これには両国の人々が一緒に観戦し、熱く盛り上 がった。みんなが一体となって楽しんだ、500人も。日本人とモンゴル人が日本の建物の中で、君が代とモンゴルの国歌を歌う。若い人たちも立ち上がって、感動的でしたね。僕はあれを見て日本とモンゴルはここまで一緒になれるのだ、モンゴルにとって日本は格 別の存在なんだろうと思いました。ツォグトバータル外務大臣も来てくださった。このような交流こそが素晴らしいですよ。 
 ――日本留学への支援やモンゴルの若者に期待することは?
 彼らは大変優秀で、日本で学ばれ、 日本の文化を感じ、身に着けて来られる。現在すでに日本には3000人以上の留学生がいらっしゃる。人口に対して1000人に一人の割合です。この国に戻って来られて、さまざまな分野で活躍されるのを応援したいですね。今年6月にモンゴル高専の初めての合同卒業式に出たのですが、モンゴルの国歌に続いて日本の国歌も歌われて感動しまし た。様々な形で学生が育っていくのを見るのは大変うれしいことです。日本との関係が自由で、民主的に発展するよう頑張ってほしいです。
 ――ところで、“アスリート大使” と言われるほどのスポーツマンでいらっしゃる。
 草原マラソンで50㌔トレイルランを完走したことは忘れられないです。UB マラソンも走っています。ほかに乗馬もある。乗馬は、僕は相当レベルが高いですよ(笑)。立ち乗りは当然だけど片足立ちも。非常に面白い!馬一頭 もっています。馬の名前は日本名では 令和の「令」、モンゴル名は「サイ リンシャラグ」。その馬に会うためにまたモンゴルに来るのが楽しみです。
 ――文化の豊かな国ですが、モンゴルでは何に興味をもたれ、楽しまれましたか?
 馬頭琴を習っています。皆さんがギブ アップすると聞いていたのでやらなかっ たが、あまりにも美しい音色なので、やっぱりやることにした(笑)。日本に戻っても続けたいですね。馬頭琴交響楽団の人たちには去年の天皇誕生日に演奏してもらい、おかげさまで多くの楽団員の 方々とおつきあいが出来て、より親しく演奏が聴けるので有難いです。オペラもすばらしい。モンゴルとの距離がぐっと近づきます。最後にオペラ劇場で見たのはバレエの「ジゼル」。これもプリマドンナを存じ上げているので親しく観られ ました。あとはモンゴル語。モンゴル語は難しいが、挨拶をモンゴル語ですると皆さんに喜んでもらえるので、いろんな機会にやってきました。勉強は続けていきたいですね。
 ――最後に、在留日本人やモンゴル の人々にメッセージをお願いします
 日本とモンゴルの関係が深いのは、なんと言っても人と人との交流ですよ。だから今の良い関係が築かれている。大勢に支え られて暮らしていらっしゃる日本の皆さん、日本とご縁のあるモンゴルの方々に対する感謝の気持ちでいっぱいです。皆さん、引き続きがんばってください。
――ありがとうございました。
※インタビューを終えて
モンゴルの21県、すべてを廻って見て来た大使の精力的な活動は特記 値する。「現場を知って、いっそうモンゴルについて豊かに語れるでし う」と言う。趣味では乗馬にのめり込んでいる? 馬の話となると膝を乗り出し、「写真を見せましょうか」とスマホで愛馬の写真をとり出して見 せてくれる。普段はあまり見せない大使の素顔は意外と屈託ない。高岡大使にとってのモンゴルは、どこの国よりも惹かれたに違いない。インタビ ューを通してそう実感させられた。

「天皇陛下御即位記念祝賀会」に集った人々