「メイド・イン・モンゴリア」ブランド、シリーズ XIV        「モンゴル産は信用できる」を掲げるチャンダマン・アグロパーク

特集
41@montsame.mn
2018-03-21 09:05:44
 今回は、またしても我らが食卓を彩る食材、特に、小さな地元企業を「モンゴル産もしくはチャンダマン・ブランド」として一つにまとめようとしているユニークなプロジェクト案件についてである。取材班が向かったのは、ウランバートルから約120㎞離れたトゥブ県バヤンチャンダマン郡だ。
 皆さん、モンゴル産農産物と言ったら、まず何を思い起こすでしょうか?ジャガイモやニンジン、カブ、キャベツ、トマトもしくは地元市場などでよく見かける天然のチャツァルガナやクロスグリ、コケモモ、ベニサンザシ、野イチゴなどの果実を記憶の中から掘り起すかもしれない。そもそも、モンゴルは寒暖の差が激しいことから栽培と収穫できる農産物は限られてしまい、栽培できたとしても一年中食べたりしているわけではない。かつてのモンゴルでは、野菜や果実に対する国内需要を完全に満たせようとする、非常に野心的な国家計画があったことをご存知だろか?

 
 旧社会主義時代は、国家計画として「秋季の旬の食材」という概念があって、栽培から収穫、そして流通までが計画的に行われていた。それが、がらりと変わってしまったのが、体制崩壊後である。社会経済の転換過程で多くの農業用ハウスや耕地が失われ、かつてのモンゴル産が輸入品に変わってしまった時期もある。
 
 社会経済の転換期を終え、成長が勢い付いた2000年代から国産への意識が高まった。これと並行して、モンゴル人の食に関する意識も高まり、より安全な食材を求めるようになったこともあって、国産の農産物は輸入品に比べると決して安くはないが消費者がもとめるのは、こうした意識変化によるものだ。
 
チャンダマン・アグロパーク計画とは

 チャンダマン・アグロパーク計画は、かつてトゥブ県ビャンチャンダマン郡に展開する地元企業や農家らを集結させ、一つにまとめあげ、農産物の栽培から収穫、流通に至るまでの各段階を一貫して行うことを目指すものである。この計画は一般市民の健康や食の安全に大きく貢献できる上、雇用創出と地方経済活性化に繋がる。開始から2年が経つが、大勢の協力団体が加わっているという。地元の自治体や農家、国立農業大学、ゴロムト銀行等が協力し合い、「フレムジ総合計画」、「酪農総合開発計画」、「食品製造総合計画」の三つの指針から成り立つ計画を遂行している。

 
フレムジ総合計画
 
 フレムジ総合計画は、温室栽培に関わるものだ。この計画の果実として生まれたのは、「チャンドマン・ジムス」ブランドの天然そのものの酸っぱくおいしい味わいのイチゴや「チャンドマン・フレムジ」ブランドのトマトやキュウリなどである。この2、3年で、モンゴルの農業においては、ハウス栽培による菜園が活発になり、かつての勢いを取り戻しつつある。昨年のハウス栽培による収穫量は約5140㌧に及び、全国的には年中約19㌶分の温室栽培を行っている。旧体制の計画経済時代は、全野菜耕地の40~50%をハウス栽培が占め、総収穫量の65%であった。1990年は約12万平方㍍に達していたハウス栽培は、現在76㌶まで復活された。その内、56.8㌶は夏用ビニールハウスで、そのほとんどが首都圏とトゥブ県に集中している。
 モンゴルは消耗品に関して中国に大きく依存していることはいうまでもない。農産物だけでも、2000万米㌦分の野菜・果実を中国から買っている。農業振興は国家発展の“鍵”などと言われるほど、この分野は熱い。特に、輸入代替となる野菜・果実の栽培は、収益優先というより国民の健康や安全の確保という意味での意義が大きく、注目度も高い。だが、モンゴルは野菜栽培に適した大地とは決して言えない。というのは、気候上、寒暖差が激しい上、降水量も少ないという問題があるからだ。そこで、ビニールハウスが温度や湿度の調整機能に優れるなど、モンゴルにとって最も適切な栽培方法だといわれる。その中で、モンゴルの厳しい冬を耐え忍ぶ冬用温室の活用が注目の的である。専門家は長い冬季を有効活用できる温室が普及すれば、その波及効果は計り知れないという。モンゴル企業は、冬季用温室ハウスに対して積極的な姿勢を示しており、チャンダマン・ジムス社やノゴーン・ソル社、トゥメン・スイフ社などが精力的に展開中である。関税庁の発表によと、モンゴル人の野菜や果実の消費量は年々増加の傾向で、2016年だけで約910万㌧の野菜や果実を輸入している。チャンダマン・アグロパーク社も需給バランスの緩和を図るために菜園事業を始め、「フレムジ総合計画」を進めるに至ったという。昨年は、同社は一日4㌧収穫できる冬季用温室を7戸も完工させた。そのおかげで、栽培されたのは、「チャンダマン・ジムス」ブランドのイチゴと「チャンダマン・フレムジ」ブランドのトマトやキュウリである。同ブランドの野菜や果実は、ウランバートル市で展開する各スーパーマーケットで「チャンダマン・アグロパーク」のシール付きで販売されている。今後は温室ハウスを53戸も増やすほか、倉庫や研究施設、直売所なども設ける予定である。

 
食品製造総合計画
 
 耕地からの収穫物もしくは牛乳からの農産物に対して加工を施し、完成品を製造するもので、同地域で栽培された農産物から食品までの過程を一貫して行う。トゥブ県の2016年度ジャガイモ収穫量は約6万5000㌧、野菜収穫は8100㌧、果実は130㌧となったが、チャンダマン・アグロパークは約1万㌧を貯蔵できるようになるという。
酪農総合開発計画

 酪農総合開発計画は、現在約2000頭の牛が飼育されている7戸の畜舎が既に建てられて
いるが、今後一日約1万5000㍑の牛乳生産能力を有する10戸の畜舎を立てる予定である。畜産物に対する需給を考え、ミルク製品の海外輸出を視野に入れて事業展開を図るという。この度、同計画の一環で、「モンゴル・エコロジー・ボルドー」が肥料の生産を始めた。年間約3~5㌧の肥料の生産が可能だ。輸入肥料に比べると、国産1トン当たりは約10~15万トゥグルグも安く、農家はその経費を一定の範囲内に抑えられるという利点がある。モンゴルは農牧業の国として知られているが、「政策の一本化を図ることで「モンゴル産」の農業製品が有効に生産され、さらに輸出の可能性も高まる」と、チャンダマン・アグロパーク社のCh.バトバヤル社長は語る。