モンゴルの遺伝的資源の保護とハルマグ果実

特集
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2021-10-18 09:34:31

 モンゴルは地球温暖化、気候変動の影響を大きく受けている10ヶ国の1国であり、2020年時点で約1億2000万㌶、つまり国土面積の79.3%が徐々に劣化に向かっており、砂漠化削減に向けたソリューションを探っている。その中で、ウムヌゴビ県で活動する「アミンヘルへー自然財団」NGOの実施による「クイーンハルマグ・クラスター」開発プログラムによる、ハルマグ果実(ニトラリア)の栽培や増殖で砂漠化問題を解決できることが明らかになった。「アミンヘルへー自然財団」NGOは2021年からニトラリアの果実保護、繁殖活動を開始し、現時点で10万本以上の苗木を育て、モンゴル21県におけるハルマグ果実化キャンペーンを行っている。ハルマグ果実の栽培はなぜ砂漠化問題の解決になるのだろうか?この質問に回答するため、弊社取材団はウムヌゴビ県にある「アミンヘルへー自然財団」NGOを訪問した。 

 ゴビの森林化

 ハルマグ果実というのは、砂質土壌の土地で、峡谷、天然ソーダのある場所で育ち、忍び寄る茎から枝を出す、高さ50~80㌢の低木に3〜7個のクラスターで成長する青褐色や茶色の柔らかい果実である。この果実は7月上旬と中旬に開花し、8月と9月に成熟する。ビタミンCや有機酸、甘味料が豊富。ゴビの住民がハルマグ果実を収穫し、ジャムや飲み物、甘いワインなどを作っている。

 ウムヌゴビ県で20年以上、レンガ製造を行っているガルトード社は、自然保護活動に貢献するため、「アミンヘルへー自然財団」NGOを2012年に創設し、2014年から活動を開始した。ガルトード社のD.トゥルバヤル社長は「我は自然を再生し、グリーン開発をリードするとともに、地方の特徴に合った経済成長に貢献をするため、『クイーンハルマグ・クラスター』開発プログラムを提案した。このプログラム実施に当たり、自然保護、再生、植物、果実の繁殖に取り組むためNGOを創設した。このNGOの活動を通じて砂漠化の影響を受けているゴビ地域で灌木や果実を植え、遺伝的資源を保護することを目指している」と語った。ゴビの森林化と砂漠化の 予防に最適な植物がハルマグ果実であり、現在、ウムヌゴビ県の領土面積の60%にハルマグ果実を植え ている。しかし、最近はハルマグ果実が成熟せずに 秋季を迎えることが多くなり、この状況が続いたら 10~20年後には稀少植物になる恐れがあるという。


 グリーンビジネスと健康

 「クイーンハルマグ・クラスター」開発プログラムの実施に関して、「クイーンハルマグ」社が創立され、ハルマグ果実を原料に生産できる様々な製品の試験、研究を行う。現在、40種以上の製品のサンプルを作り、10種余りの製品を生産している。ゴビの森林化を目的に始まったハルマグ果実の栽培及び保護活動は小中企業で拡大して来た。「クイー ンハルマグ」社は2017年、ハルマグ果実によるお茶のテスト生産を開始し、この果実の意義を研究した。研究によると、ハルマグ果実には人間の健康に重要なリン、マグネシウム、ビタミ ンDとC、抗酸化物質、亜鉛、カルシウムなど20種類以上のミネラルが含まれる。また、腸管運動性、血液希釈、肌の色調回復、糖尿病や癌細胞の抑制にも効果的であることが立証された。ハルマグ果実はチャツァルガナ(サジー)に比べ、ビタミンCの含有量が8倍も多かった。

 しかし、1日当たりでは1㌘だけを使用する。モンゴル国民はハルマグ果実を古代から伝統治療に用いてきた。同社はモンゴルで植えるハルマグ果実4~5種の中で最も一般的である 黒枸杞、赤い枸杞を栽培し、製品に 使用している。黒枸杞はウムヌゴビ県で初めて栽培され、成功した。同社の製品は今年から市場で販売され、自然からハルマグ果実を摘むだけでなく、栽培してから製品を製造するグリーンビジネスの運営を目指しているという。現時点ではハルマグ果実による5種のお茶を生産しているが、化粧品をはじめ、あらゆる種類の食品製造に使用できるとともに、ハルマグ果実の石鹸、プリン、ジャム、飲料、お酒のモデル製品にも取り組み、ゴビのハルマグ果実をウムネゴビ県のブランドとして宣伝することを目指している。同社は2018年に中国の上海で開催された国際見本市で製品を展示したが、コロナ禍の影響で過去2年間参加できなかった。5種の茶生産を中心に運営する同社はウランバートル市で店舗をオープンする予定。現在、同県庁所在地のダランザダガド郡にある「Grand Gobi Resort」観光キャンプで店舗を開いている。


 今後の目標は世界市場へ

 「クイーンハルマグ・クラスター」開発プログラムの目的は、21県にハルマグ果実の苗木を供給し、成熟した果実を市場に上場させ、モンゴルの遺伝的資源となるハルマグ果実を普及させることである。同社のS.ナモーンダリ氏は「ハルマグ果実を21県で栽培し、保護することで世界へ進出するドアが開かれる」と 語る。このため、ハルマグ果実による約40種の製品を製造するため努力しており、中国の上海ヘハルマグ茶を輸出したが、売れ行きは好調であり、消費者からの評判も高いという。今後、米国、ヨーロッパ、アジアの市場へ製品を輸出する将来計画を立てたという。モンゴルには、人間の身体に良い多種の薬草があり、経済的利益をくれる製品を作っていけば、鉱業に代わる製品製造が可能であることの実例として、「クリーンハルマグ・クラスター」開発プログラムがある。このプログラムはハルマグ果実の保護と栽培に関する総合調査を行い、絶滅の恐れがある薬草の 遺伝子的構造の保全にも貢献している。