M-JEED事業、実施10年目で750人以上が留学経験を生かし母国で活躍中!

社会
b.undrakh@montsame.gov.mn
2023-05-14 16:11:14

 「工学系高等教育支援事業」は、通称M-JEED(エムジェード)として知られているが、モンゴル国民の間は『1000人エンジニア』として親しまれている。同プロジェクトは、モンゴルの高等教育分野において、高度な専門知識と能力を有するエンジニアの育成を支援し、産業発展への寄与を目的としている。モンゴルは、金や銅、石炭など、豊富な鉱物資源を有する、いわゆる資源国である。国内総生産(GDP)の約2割、輸出産品の8割以上を鉱産物が占め、鉱物資源分野はモンゴルの経済成長を率いてきた一方、単一産業への依存の高さが課題視される側面がある。鉱産品の大半が未加工の鉱石のまま輸出され、国内の付加価値産業の育成が望まれる。このような背景から、「1000人のエンジニアの育成」をスローガンに、工学系人材の育成、研究活動を支援するため開始されたのが同事業である

 「モンゴル・日本戦略的パートナーシップ」中期行動計画に基づき、日本国政府の有償資金協力による同プロジェクトは、2014年から実施され、今年で10年目の節目を迎える。同期間、①高専留学プログラムで145人、②学部レベルのツイニングプログラムにより236人、③共同研究プログラムのもと、修士課程31人、博士課程56人の卒業・終了生を輩出した。さらに、共同研究を進めるためノン・ディグリー・プログラムでモンゴル国立大学及びモンゴル科学技術大学の291研究者らが短期間で日本の50以上の連携大学及び研究機関に派遣され、日本から300以上の協力研究者がモンゴルの高等教育機関へ招聘された。

 同プロジェクトの卒業生全員が帰国後、オユトルゴイ、APUMAK等国内の有力企業をはじめ就職し、高度な専門技術の知識を生かしていると言う。モンゴル国立大学及びモンゴル科学技術大学における各10の共同研究成果は、国内だけでなく日本が直面する課題解決やスタートアップ設立など新事業展開に貢献できると期待が高まっている。同プロジェクトは人材育成だけでなく、国内の工学教育・研究における機材の調達や国際基準を満たす研究室を新設するなど、研究者がより高度な研究活動を行う拠点を整備しつつある。


10年間で891人が日本で学業及び研究活動を実施している。


 同事業は毎年卒業生向けの就職フェアを開催して今年で5回目となると言う。2023年3月に日本の高等専門学校及び大学を卒業して帰国してきたM-JEED卒業生向けに開催した「就職フェアー2023」に在モンゴル日本大使館菊間参事官、田中伸一JICAモンゴル事務所所長、教育・科学省オユンビレグ政策局局長とモンゴル科学技術大学ナムナン学長ら参加し、身に付けた専門を生かし、母国の産業発展への貢献に期待を寄せ、就職活動を激励した。

 就職フェアを主催する工学系高等教育支援事業のデンベレル・ナムスライ運営事務局局長に取材した。



――工学系高等教育支援事業の実績を簡単に言いますと・・・

同事業は、国内で1000人エンジニア・プロジェクトと親しまれ、今年で10年目を迎える。同事業は、①高専留学プログラム、②学部ツイニングプログラム及び③共同研究プログラムの第3本柱で実施され、10年間で延べ891人が日本へ派遣された。内750人以上が学業及び研究活動を終え、母国のそれぞれの専門分野の発展に取り組んでいる。

今春は、高専留学を37人、ツイニングプログラムで日本の大学を68人、計105人が日本留学を終え、帰国した。卒業生は国内企業で最低5年間就職する義務があり、海外で勉強した優秀な人材が国の産業開発と経済発展に貢献する仕組みを取っている。

――同事業卒業生の特徴と言えば?

卒業生は、日本語と英語が堪能であり、モンゴル科学技術大学で1.52.5年の予備教育を修了後、23年間日本の高等専門学校と協力10大学に留学し、準学士と工学士号を取得する。主に土木、建築、機械、情報システム、電気電子、および材料・生物工学を専門としたエンジニアが育成される。特に、ツイニングプログラムの卒業生は日本とモンゴル科学技術大学の両大学のダブルディプロマを取得する。

――卒業生の就職状況を教えてください。

私たちは、2017年から卒業生向けの就職フェアを開催し、今年で5回目となる。毎年30を超える企業が参加し、卒業生と直接面接を行い、10人以上がその場で内定される。例えば、今回の就職フェアで、電通データ・アーティスト・モンゴル社は、卒業生5人に内定書を渡し招待した。このように、卒業生は全員就職している。

――情報提供、ありがとうございました。


M-JEED卒業生:留学時の研究活動で、問題解決の方法と考え方について勉強できた事が職場でとても役立つ。

 同事業の卒業生は今何をし、留学経験を活かしているか、代表3人に取材した。

 


「高専留学プログラムでは、モンゴルにおける1年半の予備教育があり、日本語を最初から学びながら基礎教育も日本語で受けたので、日本留学後に困った事はなかった。帰国後に1000人エンジニアが主催するジョブフェアに参加し、ITゾーン社に入社し、その2年後、同期の紹介で現職のモビコム社に転職した。モビコム社では、ITセクターに所属し、請求システムの保守・変更・新システム導入の際の作業等を担当している。高専留学では、一番ベースの知識を学び、また、物事を自分で考えて遂行するスキルが身に付いたのが、仕事をする上で役立っている」

 

「香川高専を卒業後にコロナ渦の中に、ジョブフェアがオンラインで開催された。ユニテルとモビコム社に内定をもらい、モビコム社に入社した。その1年後に、特に日本の受注業務を行うリクテック社に転職した。ここでは、日本との交流が盛んで、M-JEED卒業生が11人就職中である。高専でプログラミング言語等の基礎知識を勉強できて良かった。仕事をしながらモンゴル科学技術大学に通い、学士号取得した」

 


「高校の先生に紹介され、日本留学を目指し、同事業のツイニングプログラムに参加し、2017年にモンゴル科学技術大学に入学し、2019年に長岡技術科学大学に編入、2021年に帰国した。モンゴルでは、日本語を十分に勉強しながら、EJU留学試験の対策だけではなく、専門授業も充実していたので、日本留学中に大変役立った。日本では、航空流体工学の研究室で飛行機・風車の手法を勉強し、とても楽しかった。今の仕事に役立つ知識がたくさん身に付けたと思う。発表する機会もあり、練習できた。現職は国営火力発電所であり、モンゴル電力の65%を供給している。発電所に7つの発電ユニットがあり、自分は機械ユニットに入って運用やメンテナンスを行う。機械ユニットは、別のユニットに必要な機械とか部品等を作っている。留学時の研究活動で、問題解決の方法と考え方について勉強できた事がとても役立つ。5年後は社内で昇進し、管理職を目指している」



 同フェアに参加したモンニス・モーターズ社のA.ナラン人事部シニアマネージャーは「弊社は同フェアに初回目から毎年参加している。一期生から2人が機械整備士と日産株式会社の正式トレーニング・エンジニアとして弊社で活躍して3年目に入る。同事業卒業生は、問題解決力、コミュニケーション力に長けている」と感想を共有してくれた。就活する和歌山大学環境工学部を卒業したO.ミャグマルダッシュは「学部後半の2年間の日本留学を終え、帰国した。ジョブフェア参加企業の中から、MCS社やAPU社への就職に関心がある。日本の文化や日本語を生かし、身につけた知識とスキルを自国の発展に役立てたい」と意気込みを伝えた。