旭鷲山バトバヤル氏:日本人の言葉「最初に道を付けた人を忘れるな」

特集
41@montsame.mn
2017-12-14 10:04:49
 日本人は「道を付けた人を忘れず」という。大相撲の第70代横綱日馬富士が(本名:ダワーニャム・ビャムバドルジ)による現役引退という残念な記者会見がモンゴルと日本の相撲ファンに衝撃を与えたばかりである。稽古熱心な横綱として知られている横綱日馬富士が暴行事件を巡って、引退というけじめをつけたことは、相撲ファンにとって残念でならなかったであろう。しかし、事件を巡って、横綱日馬富士のファンによる他者に対する非難や中傷、疑いが絶えず、今も続いている。そういったファンによる誹謗中傷や非難が向けられた関係者の一人は、角界のモンゴル人フェバーの道を付けた元小結旭鷲山のダワー・バトバヤル氏である。彼は角界引退の後、帰国。政治家を目指して総選挙で出馬し、当選。任期満了後は実業家として活躍中。モンゴルにとっては、外国投資の誘致とモンゴル発展への寄与を目指す各個人、一人残らず、彼らの名誉が大事である。
 同氏に、この度日馬富士関の問題で騒がれていることや誤報などについて聞くためインタビューした。国際調査報道ジャーナリスト連合が昨年、世界に衝撃を与えた「パナマ文書」を発表。モンゴルは総選挙中であった。この文書には、モンゴル人49名の名が列挙されていた。世間も騒いだ。この49名にバトバヤル氏の名があった。総選挙で立候補を考えていた彼にとって、これは残念で大きな打撃であった。彼は自ら警察に対して真相追及を依頼。当局の調査で彼に対する疑惑が晴れたが、本人は選挙出馬を取りやめた。カリブ海の英領バージン諸島にある「イムポックス」、「ギューマックス」「アブロス」といった会社らの株主とされるモンゴル人のダワー・バトバヤルという人物は、旭鷲山・D・バトバヤル元国会議員とは、正真正銘の別人であることが判明。しかしながら、彼に対する攻撃は止まなかった。警察当局は、上述した会社が旭鷲山・D・バトバヤル氏に無関係であることを表明していた。次にインタビューを始める。
 
――国会総選挙中、オフショア口座に関する騒動がありましたが、当局は無関係であることを確かめましたね。しかし、どうして出馬しなかったのでしょうか。
 騒動は総選挙への出馬に関する決意を固めている矢先にあった。ある日の朝起きたら、オフショア口座の所有者になっていた。騒動に関連して、警察や汚職対策庁、諜報機関などのあらゆる関係を尋ねて、自分の潔白を証明しようとした。結局は当局が無関係であることを証明したが、総選挙への出馬に対して妨げになった。総選挙の際に、民主党党首に呼び出されて「オフショア口座があるなら、出馬を辞退しろ」と言われたこともあった。当時は、まだ捜査中であった。しかし、捜査後は、名義人がダワー・バトバヤルと自分の名が同じだが、正真正銘別人であることが判明。本当に残念に感じた。これはあってはならないことだ。要するに、記者がある人物について政治的な意図をもった根拠のない情報を流すとそれが世論を動かして、その人が被害を葬っている。こんなことは本当にやめるべきだ。無責任で倫理に欠ける者が相手の事を配慮せず、自分にとって大損害をもたらした。大規模な投資の中止や自分が実現を目指した事業にも障壁があった。彼らは今、思いもかけないだろうが、
 
――本当に残念です。今となっても名誉回復のために闘わないのでしょうか。
 こうした誹謗中傷を辞めさせるべきではないか。自分はスポーツ選手である。長い歴史と独特な世界観、しきたりのある相撲道を志した人間で、そういった文化的な環境で育った。その品格は決して忘れるものではない。自分に向けた誹謗中傷や侮蔑などを辛抱強く耐えて我慢して、反抗を一切しない。そういった人間性こそが自分を報道機関の餌食にさせてしまう。もちろん、悔いがあるけど。

――横綱日馬富士の引退届提出に関して聞きたいです。日馬富士ファンから、旭鷲山がわざと日本に行って直接介入によって横綱を追い込んでいるとの疑いと批判があるようだが、これについてどうですか。
 それは濡れ衣だ。日本への出張がしばしばある。この間も日本出張と暴行事件が時期的に重なっただけだ。自分は実業家のほかにモンゴル大相撲協会の会長を務めている。日本への出張前に貴ノ岩から電話があった。「横綱日馬富士が自分の頭を割った」「数回にわたって何かで殴られた」との内容だった。そのあと、貴ノ岩のお兄さんと会った。空港で飛行機から降りた途端に、その事件で日本のマスコミに囲まれた。立場を聞かれたが、もちろん記者の質問に応じた。自分が知る範囲で答えて、この事件が発生したことに対して遺憾であることを伝えた。しかし、ここでのやり取りについてモンゴルのあるジャーナリストによるフェイスブックでの投稿があった。内容は明らかに自分に対する誹謗中傷的なコメント。そのジャーナリストは「旭鷲山D.バトバヤル氏は、日本の空港に降りて、記者からの質問に対して『日馬富士が今後対戦する力士を殴った』と答えた」という内容を書き込んで、「異国での仲間割れで辞めたら」と結んでいた。この投稿が社会の反感を招いた。それより「異国での仲間割れを辞めたら」と日馬富士を相手に書くべきだった。一部の人間は、モンゴル人力士暴行事件を巡る一連騒動に関して悪いのは旭鷲山だ、と悪質な誤解を意図的に与えている。普通に考えても、横綱が人を殴って、頭を割っていいというわけがないだろう。またモンゴル人の誰でも「モンゴル人横綱が引退するぞ」「引退させるべき」「早期に引退させろ」などと言えないだろう。特に、相撲道に志した人間がそういった言葉を言うか・・・。

――ソーシャル・ネットワーク上、意図的な誹謗中傷が多くみられるようになりました。これについてどうお考えですか。
 オフショア口座の所有に関する件を挙げられる。この度も相撲界の暴行事件で名誉毀損を目的にいろいろな報道があった。結局はやりたい放題をやって、お詫びと責任のないままで終わる。自分はのんきで全然相手に
していない。しかし、耐え難い圧力だよ。正直に言って、数少ないモンゴル人の仲間割れは止してほしい。
 
――横綱白鵬がゲストとして招かれた「モンゴル偉大な人物100名」番組を見ましたか?同番組に関して旭鷲山ファンから不満があったのでは。
 見たよ。横綱白鵬の特番で「角界におけるモンゴル人の歴史は横綱誕生から始まった」との内容があった。それに関して受けた印象を言うと、モンゴル国民は、モンゴル出身力士の歴史が誰から始まったか、良く知っている。本当は、「モンゴル偉大な人物100名」という番組で正確なことを伝えるべきだった。一方的な偏った意見を放送すべきではない。白鵬のみならず、多くの若者が相撲の土俵を踏むのにかかわっている。それも私自信の誇りである。私の青春等は相撲道なしで考えられない。その意味で、特番の放送を見てがっがりしたところがあった。日本人が言う「道を付けた人を忘れず」のように、モンゴルも先輩や年上の人間に対して敬意を払う慣習がある。いくらグローバル化が進んでいるとは言え、先祖が残した大事な風習や慣習を忘れるべきではない。
 
――しかし、旭鷲山が立てた功績に対して敬意を払わないのは、どうしてですか。
 そういった暴行事件等は、自分の時代になかった。例えば、自分は元横綱朝青龍に対して一切攻めたことがない。国民はわかっている。ただし、朝青龍からはいっぱい責められている。原因は不明だ。
 
――大統領補佐官を辞任されたそうですが、それについて教えてください
 辞職を自ら決意した。誰かに責められたわけでもない。経営者であるから、時間の余裕があまりない。大統領府での官職は自ら望んだわけではない。任命されて補佐官になった。でも、最近「大統領補佐官ではない」と意図的に中傷を行ない、ソーシャル・ネットワークで騒いだ。だから、責任のある官職に泥を塗りたくなく辞職を決めた。新大統領の活躍を祈って、自分も国の発展のために頑張る。
 
                                        本社記者:B.バヤル