日本の有名絵本『えんとつの町のプペル』、モンゴル語訳で初出版 5人の学生「絵の美しさに魅かれて」、書店で好評発売中
社会
ウランバートルホテルの北側にある大型書店「インテルノム」では、いま、モンゴルの学生5人が共同で翻訳した日本の絵本、『えんとつの町のプぺル』が、注目を集めている。この本は日本の芸人で、異色の作家としてヒーバーしている西野亮廣さんが描いた1冊。発売後、若い女性 を中心にあっというまに50万部を突破、アニメ映画化もされ、子どもから大人まで170万人を動員、国内外で評判を呼んだ。 学生たちが翻訳したきっかけは、名古屋大学法学部修士課程(当時)で学んでいた留学生のツェベルマーさんが美しい絵本にふと目を止め、知人の日本人から「翻訳してみない?」と声掛けされたのが始まり。彼女はモンゴル国立大学法学部・名古屋大学日本法教育研究センターで学んでいた頃から、移動図書館ガゼル文庫で絵本の「読み聞かせ」活動を率いていた大の絵本好き。さっそく大学の後輩たちに呼びかけ、ツェレンパグマ、エンフジャフラン、ルハグヴァジャルガル、ツァサンゴーのガゼル文庫仲間が賛同した。ツェベルマーさんが大手出版社に持ち込み契約。 昨年3月から翻訳を開始し、 半年で完成。
今年になって店頭に並んだ。 日本留学組、モンゴル在籍組など各地に離れていた先輩、後輩たちはオンラインを駆使して相談しながら翻訳した。最年少のツァサンゴーさん(法学部5年生)は、「先輩たちに励まされながら頑張った。自分たちが出した本が書店で並んでいるのを見て感動で胸がいっぱいになった」と話す。現地で出版社とのやり取りを担当したエンフジャ ルガルさんも、「最初は信じられなかった。本当にうれしい」と喜びを語る。コロナ禍で郵便事情が悪く、まだ本を 手に取っていない日本にいるツェベルマーさんは、「早く見たい」と待ち焦がれている。翻訳で難しかったのは、「5人の訳の流れをひとつに 統一する事、適正な言葉を 選ぶこと」など、何回も修正した。これを機に、今後は絵本の「読み聞かせ」に加えて、「翻訳」もやっていきたいと意欲的だ。「私の願いは、日本のような絵本文化をモンゴルに普及させること。親はお菓子や服 を買っても、まだ絵本を買うまでには至っていない」とモンゴルの現状を語るツァサンゴーさん。名古屋大学日本法センターの特任講師八尾由希子先生は、「うちの学生は、本体の法学部の授業とセンターでの日本法を日本語で学んでいるので非常にハードな日々。よく頑張ったと思います」と教え子の快挙に顔をほころばせ、同じく法学を教える中村良隆先生は、「物語は日本的ないじめの要素を取り入れつつ、最後は父親との絆が強調され、感動的なものになっている。煙におおわれた街というのは冬のウランバートルとも重なり、タイムリーな出版で、素晴らしい」と感想を話す。一般の読者の声も、「絵が美しい」「友達との友 情と、父親の愛が伝わってきた」など好評。最近、日本の ケーブルテレビの取材も受け た。「多くの子どもたちに読ん でもらえたら、うれしい」、5 人はそう願っている。
※1冊19900トゥグリグ、インテルノム書店と全国の支店17か所で発売している。
絵本作家・西野さんより若者に向けてのメッセージ届く
著者本人から、モンゴルの若者たちへのメッセージが届いたので、以下に紹介する。
この世界には「挑戦を歓迎してくれる環境」など、ほとんどありません。多くの場合、いつの時代も、夢を持てば「お前には無理だ」と笑われて、行動すれば「余計なことはするな」と叩かれます。
ただ、過去、星を掴んだ者は皆、「お前には無理だ」と笑われる中、夢を持つ続け、夢を持ち続け「余計なことはするな」と叩かれながらも、行動してきました。
「星はあるのか? ないのか? その答えは、空を見上げ続けた人間にしか分かりません。どうか、まわりに流されて、根拠のない結論を出す前に、空を見上げてください。希望を持ち、行動してください。
西野亮廣